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がらりと空虚感のある部屋に足を踏み入れ、家具がないせいか音の響くその場に立ち尽くす。
「せまっ」
するりと出た圭吾の素直な感想に、秋良は苦笑して見せた。
そこは小さな台所と一間しかないような部屋で、入り組んだ路地の先にぽつんとある忘れ去られそうなアパートの一室だった。
「伝手で見つけた所だし…とりあえずだから、我慢してくれ」
「伝手?」
きょとんと繰り返した圭吾の腰を引き寄せ、苦笑顔のまま秋良は続ける。
「そう、急に部屋を借りるなんてなかなかだろ?だから友人に頼んでみた」
「………っ」
秋良の口から「友人」と言う言葉が出た瞬間、圭吾の脳裏に失礼極まりない態度と何を考えているのかわからない無精髭面の男の顔が蘇る。
「っ!あのおっさんか!?」
「お、おっさん!?」
「髭面の…」
「ああ、いや、あいつじゃないよ。大学の時に散々やんちゃした仲間だけどね。…って、あいつの事、なんで知ってるんだ?」
真面目な顔を間近に覗き込みながら、なんと答えてやろうかと片眉を上げる。
軽いキス一つ分の間で考えた結果、
「お前が元気だって教えてくれたんだ」
「…そうか…変わった奴だからな。何か変な事しなかったか?」
答えに詰まりそうになったが、ごくりと飲み込んで首を振る。
「大学時代も、あいつが率先していろんな悪戯してたよ」
「いた…ずら?」
自身の大学生活を思い返し、そこに悪戯なんて言葉が入る余地があったかどうかを思い返していると、秋良が珍しく思い出し笑いをした。
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