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からん
頭上で鳴る木製のベルを聞くのは何度目だったか…などと言う事を考えながら秋良は店内へと足を踏み入れる。
間接照明に照らされた中、何人かのカップルが寄り添い、または手を取り合いながら談笑しているのが見えた。
「いら…―――しゃい」
その挨拶は奇妙に歪みはしたが最後まできちんと告げられた。
「お久しぶりです。どうぞ」
そう言って指し示されたカウンター席へと腰を落ち着ける。
目の前に立つ恭司を見上げる。
「アルコールは駄目でしたよね」
そう言い、恭司は烏龍茶を注いで飴色のカウンターへと置いた。
そしてそれきり、口を噤む。
「………」
秋良も何も言わず、出された烏龍茶に形ばかり口をつけて見せた。
「………」
沈黙が続く。
お互い俯いてグラスの中で烏龍茶に氷が溶けて行くのを眺める。
からり…と、氷がバランスを取りきれずにくるりと水中に滑り落ち、それを合図とばかりに恭司がずっと詰めていた息を小さく吐いた。
「…ケイの…ことでしょう」
そう恭司が口を開くと、秋良は視線を下げたまま小さく頷く。
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