283 / 312

8

『公共の場では止めましょう2』  ど…ど…  低く速い心臓の音と、オレに口を塞がれたために荒くなった呼吸音が間近で響く。 「…愛してる……」  腕の中の体が跳ねる。 「もう、何もかも捨てていい。何もいらない…だから……」  その耳元に唇を寄せて囁く。 「オレの傍に居てくれ…」  深い感情を込めたその言葉に、圭吾は低く唸りながら首を振るだけだった。  流れ出た涙が口を塞いでいる手に垂れて濡らしていく。 「…オレは、圭吾がいないと生きていけない……圭吾は?…違うのか?」  震える体からは返事がない。  違う?  心の中で繰り返す。  あの男がいるから?  オレはもういらないのだろうか?  オレは圭吾が居なくては生きていけないのに、圭吾はそうじゃないんだろうか?  この体に、オレを刻み付けて…離れられないようにしてしまえばっ!  ビッとシャツが裂ける音に、壁に押し付けた圭吾の体はますます震え上がった。  けれどそんな事は些細な事のように思えた。  腕を回して突起を探る。 「んんっ!」  身を攀じるその行為を許さないまま、口を押えていた手を下半身へとやると、無理やりスラックスの中へと手を差し込んで前に触れた。 「ふ…ぅっ!!やめ……」  拒否する言葉を喋るのを聞きたくなくて、破ったシャツをその口に押し込める。

ともだちにシェアしよう!