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『圭吾君の初恋』
寝袋を二つ合わせて包まる。
やや狭いかとも思うがその分温かかった。
「小さい頃の習い事?」
入口から見える星の明かりを目で追いながら、秋良に問われて首を傾げる。
「いろいろしたけど……習字とか、ピアノも……水泳もあったし、…でも一番好きだったのは空手かな」
「空手?」
圭吾のイメージにそぐわないそれに秋良が聞き返す。
「小学6年間。やってた」
「中学に入って止めたの?」
目は星を追ったままうん…と小さく笑う。
「先生を好きになっちゃってさ」
ぴく…と秋良のこめかみが動いたことに圭吾は気付かない。
「女の子に興味ないなぁって思ってたんだけど。女の子に触ってもなんともないのに指導の時に腕とか足とか触られたらすっげードキドキし始めちゃって。あ、初恋なんだなー…て」
「……」
「そう自覚したら顔も見れないし、毎回道場に行くたびに顔真っ赤だし、ドキドキするし…オカズにした後の罪悪感もすごくてさ、もうダメだって……おい?」
顔を伏せている秋良にやっと注意が向く。
「聞いてるのか?…寝てる?ったく、いろんな話しようっつったのお前なんだから、ちゃんと聞けよな」
「聞いてる」
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