296 / 312

21

『行ってみたいな他所の国♪』  一つのタオルケットに無理矢理包まり、二人してくすくすと笑い合う。 「で、どうする?」 「そうだな…それなら、いっそ海外…とか?」  圭吾の言葉にぎょっとする。 「いきなりだな…」 「いきなりって言うか…俺はずっと行ってみたいとは思ってるんだ」 「そうか…」 「うん。日本よりゲイとかに寛大なところもあるし…世界遺産とか見てみたいし…」  秋良は口を結んで黙っている。 「…どした?」 「いや…言葉が……」 「英語がいけたら大体大丈夫だよ」 「………」  素直に寄せられた眉間の皺が物語る。  その複雑そうな表情に思わず圭吾が吹き出す。 「何心配してんの?ん?言ってみろよ!」 「……」 「ん?」 「………英語は…苦手なんだ…」  秋良にしては珍しく拗ねたような表情でぷいっとそっぽを向いた。 「ぷっ…なぁ知ってるか?外国語の上達法」 「?」 「恋人がその国の言葉を喋ってると覚えやすいんだ」 「…それは…外人の恋人を作れってことか?」 「ばーか。俺が英語で喋るようにするから」  な?と同意を求めながらちょんと鼻の頭に口づける。 「ただ…問題があって…」 「どうした?」  その真面目な返事に、圭吾は一瞬返答を迷う。 「いや、そんな真剣に聞かれても困るけど…」 「ああ、すまない」 「………まぁいいや」  言う気力を奪われて圭吾はころりと転がり、天井を仰いだ。 「気になるんだが…」 「………」 「圭吾?」 「……I love youだよ」  そう囁いて自分を覗き込む秋良の顔を両手で挟む。 「愛の言葉ばっかり覚えちまうんだ」  ちゅ…と音を立てて魅力的な唇に吸い付いた。  これは、できるだけ二人の未来を幅を広げて大きく思い描かそうと作ったシーンでした。  「その国の言葉を覚えたければ、その国の恋人を作るといい。ただし、愛の言葉ばっかりになるのが難点だけど…」 と、先輩が言ってました

ともだちにシェアしよう!