300 / 312

25

『有罪、サスペンス劇場』  ざぁ…と強い風が耳元で唸り、圭吾は思わずその胸に縋り付いた。 「…怖い?」 「……ん。…アキヨシと一緒なら…大丈夫」  そうは言っても、眼下の白く泡立ち、大きな音を立て続ける海を見ていると心細さで一杯になった。  それを押し隠したくて圭吾は最後のキスを秋良にねだる。 「ん…っ」  熱いその体温が失われることに、地面が抜け落ちそうな恐怖が襲う。  今ならまだ  今なら…  幾度もそう思うが、二人引き離されずにと願うにはもうこれしか考えられなかった。  崖の上、風にもまれながらじりじりとその先へと向かう。 「圭吾」 「…アキヨシ」  言葉を聞き逃したくなくて、お互いの耳に唇を近づけて囁く。  ―――――愛してる。  いつも胸を抉るその言葉に涙を滲ませながら、二人は固く手を握り合い一気に空へと身を躍らせた。  これ、一番最初に考えてたラストです。  二人で崖から海に飛び降り心中して、秋良氏だけが生き残り、罪を抱えて生きて行く…みたいな?ちょっと後味が悪すぎて変更しました。

ともだちにシェアしよう!