301 / 312
26
『21時→6時で寝てください』
ふ…と泣き声が聞こえた気がして重い瞼を開けようとした。
けれど開かず、小夜子は細い指で目を何度か擦った。そうしている間にも泣き声は次第に大きくなってきており…
「ごめん、ごめんね」
謝りながら慌ててぐずり始めた赤ん坊を抱き上げた。
ふわりとした重み、
大人のものより幾分高い体温、
泣き声も、癪に触るものではなく、か弱い泣き方だった。
パジャマの前を開け、そっと乳首を含ませると、赤ん坊は一瞬驚いたようにぴくりとし、こちらが驚く程の力強さで食らいつく。
「ごめんね、待たせたね、…美味しい?」
んく…んく…と返事の代わりに勢いよく喉を鳴らす音がする。
その音を聴きながら、小夜子は馴れない育児からくる睡眠不足に抗いきれず、うと…と目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!