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第3話
「あか・・・あかん・・・こんなん・・・あかん。ああっ・・もっと・・・いっぱいにしてぇ・・奥、ほじってぇ・・」
上級生は叫びつづけた。
「奥・・・奥が好きぃ・・・」
何度も何度も身体を震わせながら。
とうとう床に崩れ落ち、腰だけをもちあげられながら、串刺しにされ続けていた。
殺されるように。
いたぶられるように。
彼は怯えた。
もうエロさなんてなかった。
死にかけた人間を貫き殺し続けるような残酷さしかなかった。
ふぅっ
ひぃぃ
貫かれる衝撃の度に、踊り場の床に爪を立て、声をあげのた打ちまわる上級生はまるで青虫が蠢いているかのようだった。
肉が蠢く。
快楽を動源にして。
「奴隷ってええなぁ・・・こんなにシてもらえて。なぁ、これじゃ俺のが奴隷ちゃうんか?」
ソイツが笑いながら言った。
腰がいやらしく回された。
ふぃぃ
ぐぃぃ
もう奇妙な声しか上級生は出さない。
だらんと開かれた口。
何も映さない目。
完全に飛んでいた。
絶頂にい続けて、脳が焼き切れたのだ。
ただソイツの笑い声がした。
傲慢な上級生をただの肉の塊にしたことが楽しいのだとわかった。
でもそれはあまりに明るい声で、それか逆にこわかった。
ソイツが放ったのがわかったのは、笑い声が止んだからだった。
奥に送り込むように動きながら放つと、ソイツは上級生の掴んでいた腰を乱暴に手放した。
ドサリ
上級生の身体は細かく震えたまま床の上に投げ出された。
その痛みにさえ、上級生は感じるように震えた。
そして床の上で細かく震え続けていた。
ズボンは膝の下でクシャクシャになっていた。
白い尻や、細い腰、背中には吸われた跡が散らばっていた。
いやらしく開かれたまの穴から、ゆっくりと注ぎ込まれた精液が流れ出す。
犬のように舌をだし、目の焦点が合わないまま、上級生は床の上で痙攣し続けていた。
ソイツは上級生を見ようともしなかった。
サッサとチャックをあげ、ベルトを締め、ズボンをくつろげただけの姿を整えていく。
「ほな、またな、先輩 」
軽く言葉だけをかけた。
そして、そのまま上級生をそこに残したままそこを去ろうと背をむけた。
そして目があってしまったのだ。
驚きから動けなくなっていた階段の下にいる彼と。
少し驚いたようにソイツが目を丸くしたのは彼の奇怪な姿のせいか。
帽子マスクメガネといった。
それは、思いの外、無邪気な表情だった。
そして彼は一瞬で理解してしまった。
見つかる前ににげなければならなかったのだと。
真っ黒な瞳が自分を見ていた。
光さえ届かないような、闇のような瞳が。
彼は全身の肌が鳥肌が立つのがわかった。
見られていた。
誰も彼を見てはいけないのに。
メガネのガラスの向こうの彼の瞳とソイツの瞳が結びついた。
帽子もマスクもメガネもはぎ取られるような感覚に彼は恐怖を覚えた。
見られている。
見られている。
その目の奥に映し出される自分の姿が見えて。
人の脳内で結ばれる像を見ることなど有り得ないことなのに、それが見えて。
それが見えてしまった。
それは、この数年見ていなかった自分の姿だった。
それは恐ろしく醜悪な自分の姿だった。
「オレを見るな!!」
彼は絶叫した。
それは凄まじい声で、思わず階段から下りてこようとしたソイツが立ち止まってしまう程の気迫があった。
人がいたことより、彼の格好に少し驚いていたようだったソイツは、さらに目を丸くした。
びっくりした子供のようなあどけない顔だったが、彼にはもうソイツが恐怖そのものでしかなかった。
そんな目で見るな。
オレを見るな!!
オレに見せるな!!
オレを。
恐怖で身体が動かない。
「お前・・、そんな声出したら人が来るやろが」
迷惑そうにソイツは言った。
でも、そっと視線を逸らしてくれたので、彼はガクガク震えながらも動けるようになった。
自分から視線をそらせなかったことに彼は恐怖した。
あれは何?
なんなの?
確かに彼は彼の姿を見た。
ソイツの視線の奥に。
身体を自分で抱きしめながら彼は震えた。
彼を見ないようにして、ソイツはでも彼の様子をうかがっていた。
「お前・・・」
ソイツが何か言いかけた。
旧校舎の外に人の気配がし始めていた。
ソイツは舌打ちした。
サッサと彼の横を通り過ぎる。
彼はしばらく震える自分の身体を抱きしめていたが、慌てて彼も旧校舎の外に出ることにする。
ここにいたら面倒なことになるのは間違いない。
悲鳴。
そして精液にまみれた上級生。
何かに誤解されそうだ。
人間に囲まれることを考えるだけで身体が震えた。
アイツみたいな視線はないだろうけど、視線は嫌だ。
絶対に嫌だ。
下半身を剥き出しにされ、精液を垂れ流しにされたまま気絶している上級生のことは気になったが、とりあえず、慌てて外へと走りでた。
出入りするための廊下の窓は開かれたままで、ソイツがそこから出ていったことがわかった。
彼は飛び出す。
誰かに見つかる前に。
怖かった。
誰かに見つかり、色んな人間に質問されたりすることもそうだけど、アイツの目が怖かった。
帽子やマスクの中隠れさせてくれないあの目が。
怖い。
怖い。
あの目が映し出す自分の姿が。
上級生の話は次の日から話題になった。
旧校舎からの悲鳴があったという報告に駆けつけた教師達は、そこで見たことを何も言わなかったはずなのに。
噂はあっという間に駆け巡った。
何も答えようとしない上級生、性被害を疑われるような状況、学校は公になることを避けたのだろう。
上級生は2日程登校しなかっただけで、何の処分もなく普通に学校に来ていた。
でも、生徒達はみんな知っていた。
噂の出どころはわからない。
でも、知っていた。
あの綺麗な上級生がどうなったのか。
誰と何をあの旧校舎でしていたのか。
朝、登校していたはずなのに消えていた二人が昼休みまで何をあそこでしていたのか。
そして、上級生もそれを、皆が知っているのを知っていたはずだ。
だが、奇妙なことにそんなことを上級生は気にしなかった。
上級生はソイツの側に侍るようになった。
誰の目も気にせず。
休み時間、昼休み。
放課後。
沢山の人間に囲まれた、ソイツの隣りに上級生は当たり前のように立っていた。
「屋上であの人のん、先輩咥えとったん見たで」
そんな目撃情報すら出た。
「トイレでしとったん知ってる・・・声聞いてもうた」
そんな話も。
あの上級生すら、好きにしてる。
それは英雄物語みたいに語られていた。
上級生以外にも、近隣の高校の美しい少女や、噂ではずっと大人な格好いい女性すらソイツに夢中になっているのだ、と。
彼はそんな噂話が聞こえてくる度に思った。
何で、あんな場所に相手を放置するような男がいいんだろう。
どうかしている。と。
彼はソイツと二度と関わりたくないと思っていた。
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