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第5話

 マフラーで顔を覆われたまま、下半身を剥き出しにされ、ソイツの脚の間に背中から抱き込まれるようにして座らされていた。  くちゃくちゃと音がするのは、自分の屹立した性器をソイツが擦りたてる音だ。  んっ  ふうっ  自分が立てる声を他人事のように聞いていた。  マフラーで顔を覆ってはくれているがソイツの指が、唇や鼻筋、顎を撫でるのは止まらない。  うっ  呻いてしまったのは、出てしまったから。  慣れない快楽にたやすく身体は上り詰める。    「早いなぁ・・・可愛い」  優しい声でソイツは耳に囁きかけてくる。  「人に触られたことないんやろ、なぁ」  唇の中を指でかき混ぜられる。  キスするみたいに。  ぼんやりその指を吸う。  わからないまま、舌で舐めながら。  ソイツが息を呑む音がして、大切なものみたいに抱きしめられた。    「自分でもあんませんのか?」  出し終わったそこをもう一方の手でさらに揉まれ擦られ、彼は背中をそらす。    「もうやめてやぁ・・・」  彼は泣く。  その力ない泣き声にソイツの手が一瞬止まる。    「気持ちええやろ・・・泣くなや。気持ちようしたってるだけや・・・痛いことなんかなんもしてへんやろ」  ムキになったようにソイツは言う。  「気持ちええこと・・・したってるだけや・・・」  何故かだんだん消え入りそうな声になる。  指が涙を拭う。  その熱さにさえ、感じてしまい彼は悶えた。  指は優しく唇を撫でる。    「好きやろ・・・気持ちええこと。みんなこうしたったら喜ぶんや」  でも、また性器に置かれたままの指が動き始める。  達したばかりの敏感な先を、その熱のある指で擦られ、悲鳴を彼は上げた。  いや、いや、いや、あかん  泣くのは、強すぎる刺激のせいだ。  達したばかりなのにそんなに強くそんな敏感な場所を擦られたなら・・・。    指が熱い。  なんでこんなに熱い。  「ちょっと我慢し、知らん感覚教えたるから、な?」  声は優しいのに指は容赦ない。  擦りたてられた。  ひぃ  彼は笛のように喉から息を漏らした。  「いやぁ、よしてぇ・・・もうそこ弄らんといてぇ・・・」  彼は身体をよじりながら叫ぶ。  その暴れる身体を愛しげにだきしめられた。    熱い、あまりにも熱い指は止まることがなかった。  その指に焼かれる。  先端ばかりを執拗に嬲られた。  何かが性器から迸った。    それは射精とも違う感覚で、気持ち良いというにはあまりにも強烈すぎた。    ああっ  叫んでしまった。  逸らした喉を撫でられた。  マフラーごしに伝わる荒い息がソイツが興奮していることを教える。  「こんなん・・・知らへんやろ?な?気持ちええやろ?」  震える身体を抱きしめながら、低い声が囁いてくる。  射精とは違う、長い絶頂感に彼は怯えた。  もともと、快楽を求めるタイプではなかった。   快楽は怖いものだったから。  たまにする程度の自慰とは比べものにならない快楽はもう恐怖でしかなかった。    しかも、コイツ自体が怖いのに。  怖いコイツに無理やりつかまり、暴き出される快楽に彼は怯え、泣くしかなかった。  でもそれでも。    顔を見られることの方が,ソイツと目を合わせることの方が嫌だった。  そのためなら耐える。   耐えるしかない。  でも身体は痙攣したように震え、嗚咽は止まらない。  「なんで泣くんや。気持ち良かったやろ?なぁ、優しくしたやろ。なんでや。みんな喜ぶのに」  困ったような声でソイツは言う。  抱きしめられた。    大きな胸に顔をおしつけられ、子供をあやすように背中をなでられる。  「なぁ、泣くなや。もうせんから。みんなして欲しがるのに・・・あかんかったか?お前変わってるな」  ブツブツ、ソイツは言った。    腹に固いモノがあたる。  それがソイツの性器だとわかって怯えた。  上級生の貫かれる姿を思い出して。    「せぇへん。触るだけや言うたやろ」  強ばらせた身体に気付いて、ソイツは拗ねたように言った。    「ホンマは一度話したかっただけなんや・・・怖がらんといてくれや・・・」  気弱な声に彼は驚く。  マフラーで覆われたままの顔をあげる。  見えないはずの顔を見上げる。   愛しげに顔をマフラーごしに撫でられた。    「したいけど」    ため息をつかれ、また身体を強ばらせた。  肉塊になった上級生の白い身体。    理性を失った顔。  ソイツのたのしげな笑い声。  「嫌だ!!」  彼は言う。  震えながらきっぱりと。  「せぇへん、言うてるやん」    ため息をつかれ、まるで彼がワガママを言っているかのように、それを許しているかのように、優しく背中を撫でられた。  酷いことをされたのに、彼は疲れてしまって、心がもう限界にきていて、何がにもたれたくて、ソイツの胸にもたれかかった。  「ごめんな。怒らんといて・・・もう絶対嫌ならせえへんから」  優しく囁く声を遠く聴きながら、目を閉じた。  気絶してしまったのかもしれない。  彼にはもう色んなことが限界だった。  「可愛い」  囁く声が聞こえた気がした。         

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