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第14話

 ゆっくり服をぬがされ、全身を明るい光の下で確かめられた。  いたたまれない。   恥ずかしい。  酷い。  涙がにじんだ。   でもアイツは一人でニコニコ笑っていた。  勃起した性器をうれしそうに撫でられた。  「勃ってる」  本当に嬉しそうにアイツは言った。  「俺に欲情してるんか」  優しく握りこまれて、彼は呻いた。  恥ずかしくて、身体は全身朱に染まっている。  それからアイツもゆっくり服を脱いだ。  鍛えあげられた肉体が露わになった。  恥ずかしいのに目がそらせなかった。    「俺もお前に欲情しとる」  アイツが性器を彼の目の前に見せつけた。  恐ろしいほどデカく、血管を浮き上がらせたそれに彼は怯えた。  怯えたはずだったのに。  見ただけで、先から透明な雫を零した自分の性器が許せなかった。  どうしようもなく欲情してる。  コイツが欲しい。  怖くても。  それは事実だった。  「お前のもんや」  アイツは彼の手をつかんで自分の性器を握らせた。  指よりも熱いそこに触れただけで、彼はまた性器を震わせ、とろりとこぼしていた。  いたたまれない。  でも欲しい。   コイツが。  コイツが。  どうしようもない熱に身体が焼かれていく。  握ったソイツのそこから、自分の中から。  彼はソイツのそれを握りながら悶えた。  わからない感覚をどうすればいいのかわからなくて。    「俺はお前のもんや」  アイツは彼に口づけた。  そのキスは、ひどくシンプルでまるで誓いのキスのようだった。    「濡らすから持って来いって・・・言うたやん・・・なんでぇ」  彼は泣く。    ハンドクリームを用意させたくせに、アイツは使ってくれないのだ。    「濡らしてるやん」  アイツは低く笑った。  ぴちゃり  水音がした。  そう濡らされていた。  うつぶせにされた尻にアイツが顔をうずめている。  舐められていたのだ。  そんなところを舐めるなんて・・・。  彼は羞恥には限界がないことを知った。  いやぁ  やめてぇ      身体をよじり逃げようとする。  でも舐められる度に身体が痙攣してしまう。  「あかん、濡らさないとお前が痛いんや」  アイツは嬉しそうに言う。    「ハンドクリーム・・・」  彼は必死でいうが、舌をねじ込まれる感触に泣いてしまう。  「いややぁ・・・恥ずかしい・・・」  でも、そこにすべての神経が集まっている。  熱い舌はもうそこを溶かすようだった。  「そんなんつこうたら舐められへんやんか」  アイツが低く笑った。  「恥ずかしがるのがたまらへん。可愛い」  耳元でクスクス笑われた。  恥ずかしがらせて楽しんでいるのだ。  「変態・・・ああっ!!アホぉ~っ」    毒づいても嬉しそうに笑うだけで、舐めるのをやめてくれない。  「いややぁ・・・あかん・・・あかん・・・」  快楽に慣れない身体はそこを舐められただけで達してしまった。    「触ってへんのにイけたやん」   誉めるようにソイツは言った。  身体をおこされ、背中から抱かれた。  昔、そうされていたようにわ  もう舐めるのを止めてくれるのかと思った。  イったばかりのそこを扱かれる。     「やめぇ・・・あかん・・・おねか・・」  彼は怯えたように叫ぶ。  知っている。  前にもされたアレだ。  「お前は潮吹けるやん?教えてやったやろ?あの後自分でもしたんか?」  アイツの声は優しいが、その手は止まらない。  出した後に、さらに擦られ射精とはちがう感覚を味わされた。  あの感覚を思い出して自慰はした。  けれど、もう一度自分ではしなかった。  あれは怖い。    怖いのだ。    「してない、して・・ない・・してな・・・ああっ」  してないと言っているのに、先端ばかりを擦られた。  敏感になりすぎたそこを擦られると苦痛のような叫びだしたくなる感覚に身悶えする。    いやぁ  許して、許して  泣き叫ぶ。  「あかん。可愛いんが悪い」  アイツは言い放った。  脳が焼かれる  耐えられないモノが溜まる。      ああっ・・・   泣きながら、透明なしぶきを彼は放った。  「可愛い過ぎるやん」  震えながら泣いてる彼を抱きしめながらアイツは言った。    「酷・・・ひどい」  彼は泣く。  快楽には強すぎる感覚に、自我さえ溶け始めていた。  泣くしかできない。  「泣きなや・・・お前が可愛いすぎるんや」  アイツの言葉に彼はコイツの目は何を見ているのか疑問に思った。   指でも丹念に解された。  その指でもイカされ、「他も弄ったらな可哀想やから」と散々乳首を弄られイカされた。  そんなに出したことはなかった。   もうダメだと泣いても、許してもらえない。    「俺を欲しがってくれるまでせな、俺が淋しい」  わけのわからないことを言われた。  でも首筋を舐められ、吸われた時、身体を強ばらせた。    「アイツは痕つけるん好きやから」  あの上級生の言葉か頭をよぎったのだ。  身体が冷えた。  ああ、コイツはオレだけやない。   そんなん知っとる。  最初からそうやったんやし。  ぼんやりそう思ったら、それまで出てた涙とはちがう涙が零れた。  冷たい涙が。  アイツが突然身体を離した。  「・・・痕つくん、嫌か」  アイツは急に不安そうな顔になる。  嫌って言ってもしてきたくせに。   コイツなりに必死で彼の反応を確かめているのはわかった。  「嫌なら・・・痕はつけへん」  アイツは怯えたように言った。  それに笑った。  コイツもコイツで怯えているのだ。   それに多分。  他の誰でも自分の好きなように支配するソイツが彼には違うのだと確信した。  「ええよ。つけたかったらつけて」  彼は自分からアイツに腕を伸ばした。  アイツは嬉しそうな顔をして、首筋に歯をたてて噛み、吸い痕をつけた。  甘い痛みに彼は喘いだ。  「俺のや」  アイツは何度もそう繰り返した。  噛み、吸い、たくさんの刻印を刻んでいく。  「俺のや。俺だけのや・・・そして俺はお前のもんや」  その声には切なさがあった。  だってもう、二人とも分かっていたから。  挿れられた時にはもう、羞恥心もなにもかもが溶けてしまっていた。  力が抜けて、ぐにゃぐにゃになった身体は素直にアイツを受け入れた。  圧迫感に呻きはしたけれど、挿れられただけで、彼の性器はすっかり薄くなり、少量になってしまった精液をまた吐き出した。  恥ずかしい程に脚を広げられていることにももう気にならない。    彼はトロンした顔で喘ぎながらソイツをみつめた。  自分の醜さを何故ソイツが気にしないのか、とか、コイツが好きだったのはオレの顔やったんやないのか、とかそんなことは吹き飛んでいた。  「気持ち・・ええ」  涎をながしながら彼は言った。  アイツが息を飲む。  「エロいこと言うなや・・・こっちも散々我慢しとるやぞ」  呻かれる。  馴染むまで待っていてくれている腰が揺れた。    ふぁっ   ふうっ  声が漏れた。    「もっと・・・してや」  彼が強請る。  ピクリとアイツの身体が揺れた。  必死で耐えている。  「俺が欲しいか?突いて欲しいか?奥にぶちまけて欲しいか」    歯をくいしめながらアイツは呻くように言う。  彼は溶けた脳の中で、色んなものか抜け落ちてしまった中で残っていた答えをとりだす。  「欲しい・・・お前が欲しい・・ほしいねん・・・」  それは本音だった。  「好きや。離れてからそうおもってん」  言わないはずの本音が零れた。  ポツリと。  アイツは獣のように咆哮した。  泣いていた。  支配するかしないかしか知らない男が、醜い男の告白に獣のように吼え、泣いていた。  「・・・好きやねん。すきやねん。お前だけが!!」  アイツは叫んだ。  乱暴に腰が打ちつけられた。    ひぃ   彼は目を見開いた。  とろけた脳を直接殴られかのような感覚に。    「好きや!!」  腰を乱暴に使われた。  乱暴ではあっても、彼の感じるところだけを丹念についていく。  ええっ  めちゃくちゃええ  彼は泣き叫ぶ。  俺もや   アイツが叫ぶ。  とろけた脳は破壊されることを望んでいた。  自我もプライドもこわされた今、ただ繋がることを、もっと深く捉えることを望んでいた。   壊してぇ  もっと突いてぇ  欲しい  欲しい   欲望だけが言葉になる。  アイツは言葉を忘れた獣みたいに腰をぶつけていく。  何もかもを壊して、皮膚かせとかして、彼の中に溶け込んでしまいたいかのように。  溶ける。  何も見えない。  わからない。  溶ける。  人間の輪郭が失ってしまう。  「あいして・・・る」  どちらが言ったのかはわからなかった。  溶け合いすぎて。  どちらでも良かった。  それは大した問題ではなかった。         

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