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もう一度 anotherside1話
「服脱いで」
男は言う。
ベッドに腰掛けたまま。
部屋連れて来た青年は怯えた顔をする。
ベッドの前で立ち尽くしたまま
めんどくさい。
男はそう思った。
慣れてないのがいいかとつれて来たが、いちいち宥めるのが面倒になってきていた。
慣れたヤツは気楽でいいが、あまり他人と相手を共有するのは過きじゃないのだ。
「帰るか?」
優しくは言う。
腹立ちを出来るだけ表明しない位のことはする。
そこまでしたいわけでも無い。
いつでもつかえる穴ならあるわけだし。
ちょっとそそった慣れなさにすでに飽き始めている。
なんだって同じだ。
突っ込める穴さえあればいい。
ただ一人を除いて。
青年は首を振り、震える指でシャツのボタンを外そうとする。
指が震えて上手く外せない。
抱かれたくて自分から来たくせに。
これからキスして、身体の緊張を解いて、穴をほぐして・・・。
考えたら嫌になった。
手間だ。
だが、泣きながら、シャツのボタンを外し、ズボンを脱ぎ、躊躇しながら下着を脱ごうとまでしている青年に「もういいから帰れ」と言うのも面倒くさい。
「 」
男は開いたままのドアに向かって声をかけた。
突然の知らない名前に、まだ下着を脱げない青年は固まった。
開いたドアの向こうから、ソレが現れる。
呼べば来る。
いつだって。
美しいと言われる姿で、音のしない脚で。
コイツはいつだって、男の周りを静かに伺っているのだ。
側に置いてはいるが、信用はしてない。
今だって部屋の近くで男と青年の様子を窺っていたのだ。
「だ、誰・・・」
下着一枚の青年は怯えたようにソレに向かって言う。
この怯え方には興味をそそられた。
やっとやる気が男は出てきた。
「オレは彼の恋人だよ」
ソレは言った。
男は否定はしない。
その方がオモシロイからだ。
色んな意味で。
「帰るか?いいぞ」
男はベッドに座ったまま、あくびをしながらいう。
抱かれるつもりで下着一枚にまでなってから帰れるもんならな、そう思う。
青年は泣きそうな顔になる。
男は見ていただけだ。
ただ青年を。
それだけでいい。
その目に青年は唾をのむ。
結局、青年は男が欲しい。
一度だけでも。
だからついてきた。
青年は再び服を身につけようとしなかったし、部屋から逃げようとはしなかった。
震える脚のままそこにいた。
そういうことだった。
もうソレは青年の隣りにいた。
そして、青年を抱き寄せていた。
「大丈夫、楽しむだけ。3人で」
ソレは青年の下着の中に手を入れながら言った。
その指はもういやらしく動いているだろう。
ああっ
青年は喘いだ。
「教えてあげる。気持ちいいこと」
ソレは青年に囁く。
男は眺めることにする。
ソレは青年の身体を高め、穴をほぐすところまでするだろう。
手間が省ける。
ベッドは男の使うものなので、ソレはベッドの前のラグの上に青年を押し倒した。
青年はいきなり咥えられ、悲鳴を上げた。
いやっ・・・
何っ・・・
やだぁ・・
初めてされるそこへの口での愛撫がソレがするものなら、その反応は当然だ。
ソレは咥えたりしゃぶるのがとても上手い。
散々させてきたからだ。
いやぁ
青年は身体を震わせた。
深く咥えたソレの喉が動く。
ソレは飲むのも好きだ。
だが男のモノは飲めない。
男はソレには自分の精液は飲ませない。
飲みたがってるからこそ。
簡単に達した青年が泣きながら震えている脚の間で、腰を高くあげて、ソレはしなければならないことを始めた。
指や舌を使い、そこをほぐし始めたのだ。
ピチャリ
ピチャリ
舐める音
ああっ・・・
嫌っ・・・
やめて・・・
また出ちゃ・・・
青年が叫ぶ声。
「ええ感じになったら言えや」
ソレと二人きりの時にはでる関西なまりで男は言った。
「・・・ええ具合に仕上げとく」
青年の股関から顔をあげソレは言った。
ソレの精液で汚れた顔はそれでも美しかったが男にはどうでも良かった。
どうだって良かった。
退屈しのぎになるなら。
舌で中まで舐められ、指で解され、青年は慣れない快楽に泣き叫び続けた。
ソレは残忍な性格だから、言葉でも辱めた。
「なんやイヤらしい子やね。初めてで知らん男にこんなんされて何回イクの?」
その言葉に青年は恥ずかしさに泣く。
その通りだからだ。
ソレがナメていいのは性器と穴だけだから、ソレはそこを執拗に攻め続ける。
指でもう感じるとおしえられた場所を抉られ、また青年は泣きながら性器から迸らせる。
「淫乱・・・最初から後ろでイケるやなんて。はじめてが3Pやなんてスゴイやない、見られてたら感じるん?変態やね」
男の方に見せつけるように脚を開かせた。
濡れそぼった性器もひくつく穴も男には丸見えだ。
青年は涙を流す。
恋した相手に人との行為を見られているのだから。
貰った手紙を男は思い出す。
講演先で手渡された手紙には、いつも大学で男を見ていたと恥ずかしげに書かれていた。
見ているだけでいいんです。
見ていていいですか。
可愛らしい手紙。
だけど、泣かされている青年を見ても何の感情もない。
「見ている」その言葉にちょっと何かを感じて、声をかけた。
バーに飲みに誘うとついてきて、話をしたら未経験だと知って興味をもった。
「セックスしてみないか、俺と」
そう誘ったら部屋までついてきた。
それだけだ。
本当に見ているだけでいいやつなんかいない。
ほら、この青年だって落ちていく。
誘ったらついて来たのと同じで。
「帰るか」と聞いても残ったのと同じで。
男を愛してるといくら書いていても。
ソレの指や舌に落ちていく。
別に男でなくてもいい。
いいっ
いいっ
もう青年はソレに教えられたように叫びはじめた。
ボクは淫乱です
淫乱だから・・・出させてぇ
ソレに言わされている。
泣きながら叫び、ソレに射精をさせてくれと願う。
「オレを愛してる?」
ソレは青年に囁く。
愛してる、愛してるから!!
青年はなきじゃくる
あんなに恋した男の目の前でソレに向かって。
愛してるという。
ソレは握りしめていた性器を緩めてやった。
青年は叫びながら射精した。
ソレは振り返り勝ち誇ったように男を見た。
男はその笑顔にムカついた。
それでも頃合いだった。
立ち上がる。
「お前が勝ったわけやない、だれでも同じや。コイツもお前もな」
青年の股間から離れ、ベッドの足元の定位置にうずくまるソイツに吐き捨てる。
あれだけ青年を狂わせたのに、ソレは服の一枚も脱いでいなかった。
男は優しくまだ痙攣している青年をだきあげた。
思いもよらない優しさに青年はしがみついた。
「怖かったか?・・・もう怖くないよ」
標準語で語りかける男は、青年が恋してた男のままで。
青年は抱きついた腕に力を込めた。
男は優しく笑った。
ベッドに優しくよこたえられた。
男が服を脱いでいくのをうっとりと青年は見ていた。
夢みたいに。
「口をあけて」
男は囁いた。
青年は言われるがまま口を開ける。
唇が重ねられた。
青年はキスも初めてだった。
ぎごちない。
それに気をよくしたらしく、男はキスを楽しんだ。
ただ、キスの合間に呼ばれる名前は青年のものじゃなかった。
「 」
目を閉じ、キスをしながら何度も男は優しく囁いた。
あまりに優しいキスに名前なんてどうでも良くなった。
甘やかされるキスに、ソレに強いられた屈辱も消えていく。
だから、優しく男が入ってきた時は胸が痛む程切なくなった。
酷い圧迫感はあっても、散々慣らされ、高められていたから苦しくはなかったけれど、男が目を閉じたまま、「狭いな」と微かに笑う笑顔に感じた。
身体ではなく、心で。
でも。
「 !!」
「 !!」
知らない名前を叫ばれながら激しく腰を打ちつけれた。
その甘い衝撃に叫ぶ声を枕をおしつけられて消された時悟った。
代わりなのだ、と。
枕に視界が遮られ男の顔は見えない。
男は青年の顔も見たくないのだ。
枕を押し付けていない方の手は優しく乳首を撫でてくれるのに。
でももう完全に受け入れてしまった身体は快楽を伝えてくる。
それも、先程までの知らない男にされた無理強いの快楽ではなく、愛されていると誤認してしまった身体が受け取る快楽を。
「愛してる・・・愛してる・・・」
切ない声に身体は勘違いを起こす。
認めきれない心も誤作動する。
甘い、甘い。
胸が痛くなり、心も身体も明け渡してしまうような。
熱くて、甘い。
甘い杭に身体の中を溶かされる。
男の腰は一番奥を抉る。
全てを欲するように。
青年の腰が揺れる。
愛を受け入れるように。
青年は冷たい涙を流した。
涙は押し付けられた枕に消える。
「 ・・・」
愛しくてたまらないかのように名前は囁かれる。
自分ではない名前が。
でも身体は誤作動したまま、その声にとける。
酷い男。
酷い男。
酷い男。
どんな暴力を使って犯すよりも、酷い方法で青年は男に犯された。
一番大事な心の中まで。
そして、それをソレはベッドの足元で無表情に見ていた。
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