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第4話

 こうするつもりではなかったのにこうなっていた。  ただ話をしに来ただけなのに。  また彼がここにいるかと思ってきただけなのに。  あの目が見たかっただけなのだ。    気がついたら、その身体を弄っていた。  座ったまま、背後から抱くようにして、その性器を擦りたて、マフラーで隠してやった顔を愛撫していた。  泣きながら悶える身体に興奮していた。  でも、何故か辛い。  泣いているのが辛い。  胸がえぐられる。  自分のことでもこんな風にかんじたことはない。      「気持ちええことするだけやから」  何度も彼に言い聞かせる。  肌の滑らかさ。  吸い付きたくなるのをこらえる。    拒否しないで欲しかった。  自分を受け入れて欲しかった。    必死で気持ちよくなってくれと願いながら他人の性器を擦りたてる。  有り得ない。   なにしてんねん俺は。  こんな面倒なことするくらいなら、アイツに咥えさせてから突っ込む方が落なのに。   まだ少年だった男はそう思ってた。  ソレを側に置いる理由なんて、楽だからしかないのに。  泣いてるヤツを抱くなんて面倒なだけなのに。  でも、手の中で性器が育つのも、甘い吐息もたまらなかった。  こんなセックスとも言えないものが最高だった。  もっと感じさせたくなる。  美しい顔をみれなくてもよかった。  顔を撫でる。  滑らかな皮膚。  唇、鼻筋。  口の中を指で犯すことに夢中になる。  性器で犯すかのように、指を口の中でつかった。  漏れる声が聞こえるだけで胸を締め付けられた。    なんだこれは。  これはなんだ。  戸惑っていた。  勃起して濡れる性器が自分のモノじゃないのに、ひたすら気持ち良くなって欲しいと思うのだ。  相手に与える快楽が支配するためじゃなく、相手への奉仕であることに驚いた。  奉仕だと?  それは負けた奴らが勝ったモノへと支払うもののはずなのに。    でもこの奉仕は自分の快楽に繋がらないのにたまらなく気持ち良かった。  咥えて舐めて、飲んでやりたかった。  支配する以外でそうしたいと思ったことがなかったから戸惑った。  でも、これ以上怖がらせたくなくてやめた。  でも、もっと感じさせたかった。    「気持ちええやろ」  口の中の感じるところを擦りながら、性器の先端を親指で撫でてやる。      いやっ  それ、いやっ  せんといて  そう泣く声にはでも、確かな甘さがあって恍惚となる。    彼が気持ちいいと自分も気持ちいい。  笑い出しなくなるような、ちょっと泣きたくなるような熱が胸に溜まってる。  これはなんだ。  「気持ちようなり?」  囁き、手を早めた。  射精へ導くために。  背後から抱きしめている暖かい身体と同じくらい胸の中にある熱は暖かい。  抱きしめた身体が緊張し、そしてこの手の中に精液を放った時。  可愛い声で彼が叫んだ時。  自分がイったわけでもないのにどうしようもないほど満足したのだ。  「可愛い」  そうつぶやいたのは単に顔とかの問題じゃなかった。  抱きしめて、優しくして、気持ちよくさせてやりたい。  生まれて初めて感じた気持ちが言わせた、そんな存在への言葉だった。  発光する花みたいな顔を見た時に何もかもが狂った。  もう一度会いたくて、その目が見たくてあの場所行った。  彼の目からは聖地みたいに見えていた場所。  彼の目から見た世界がどうにも心をとらえていた。  聖地を侵略した悪魔みたいな自分。  でも恐ろしさはわかっても、そこには嫌悪がなかった。  人間への拒絶はあっても、そこには人間を値踏みするものはなかった。  どれくらいの力を持っている?  金はあるか?  権力はあるか?  暴力もあるか?  どれくらいの能力を持っている?  どれくらいの容姿を持っている?  全てを測ってそれから人間への対応が変わるのだと思ってた。  少なくとも男の周りは全員そうだ。  男が男であり、ゲームの勝者であるから付き従う。  なのに、その垣間見た彼の見る世界にはそれがなかった。  神話のように美しい世界。  踊場さえサンクチュアリになる。  それに魅せられた。  そして、男を見て彼があげた悲鳴。  おそらく、彼は男が見た自分を見たのだろう。  そして上げた悲鳴には、決して見たくはない自分の姿を見てしまったからだけではなく、彼は男が見ている世界に怯えたのだ。  完全なる拒絶。  そこに惹かれた。  ゲームの勝者で、誰もが従わずにいられない男を彼だけは拒否したのだ。  ゲーム自体を。  ずっと考え続けて、そう理解したから彼に会いにきたのだ。  拒否など許せなかった。  何故か。  拒否なんかして欲しくなくて。    あの美しい目を見たくて。    そして彼をあの踊場で捕まえ、その顔をかくすものを取り去った。  彼は瞳を閉じて、男を見ようとしなかったけれど、その顔の美しさに心を奪われた。  夜来光。  夜だけ咲く花。  母親が鉢植えをもっていた。  それに似ていた。  触れたら壊れてしまいそうな繊細ささえも。    でも、花を見た時には思わなかった、そっと守りたいと思う感情が引き起こされた。  閉じられた瞼の下から流れる涙に胸が痛み、思わず自分の視線から守るためだけにマフラーを覆った。  泣くなや。    そう思った。  泣かせたくなかった。  胸が痛んだ  泣かせたのは自分なのに。  慰めたくてたまらなかった。  触りたくてたまらなかった。  何もかもがわからなくて、たまらない気持ちになった。    そして、気がついたら、彼の身体を愛撫していた。  愛しくてたまらなかった。  喜ばせたかった。  喜ばせるのに、思いつくのはセックスか、何か買うこと位しか思いつかなかったから。  ただ、気持ちよくさせたかった。  気持ちよくさせたいだけだった。     射精して震える身体が愛しくてたまらなかった。  本当は唇に存分にキスして、狭い後ろの穴を広げて、その奥にぶち込みたかった。    舐めたい。  穴も性器も。  身体中    でも、そうしたくなかった。  彼の意志を無視したくなかったからだ。  セックスなんて男にはもうこの頃には大したことじゃなかった。  相手に困ったことはなかった。  13才の時、友達の姉に誘われてして以来。  してみて思った。  これもゲームなんだと。  だから、得意だった。  セックスでも相手を支配できると知ったから。  とことん支配することを楽しんだ。  みんな支配した。  でも、これは違う。   違う。    何が違うか分からないけど違う。  もっともっと気持ちよくさせたいだけだ。  射精したばかりの彼の先端を執拗に擦れたて、潮をふかせたのも、気持ちよくさせたかったからだけた。  「よして、よして、もうせんといてぇ!!」  快楽に慣れない彼は泣き叫んだけど。  可愛くてはたまらなかった。  透明な液体を性器が吐き出したとき、何故か嬉しくてたまらなかった。    これなら、中で射精して、イカせたりしたら俺はどうなってしまうんやろ。  もっと泣かせて、奥で気持ち良くさせたなら。  どんなに嬉しくなるのか。  思わずにはいられなかった。  後ろの可愛い穴、キツいだろうそこを弄りたくなるのを必死で止めた。    終わった後も身体を痙攣させ続けている、まだ成長途中の小柄な身体が愛しかった。  もちろん、いわゆる欲望もある。  ぶち込みたい。   突きたい、擦りたい  中でだしたい。    でめ同じくらい、穴を舐めてほぐして、優しく身体中を愛撫したかった。  いつもなら、ゲームとしての楽しさ以外は面倒な、そんな射精いがいの手間さえしたくてたまらなかった。    顔が見れなくても。  この身体が愛しい。  「可愛い」  つぶやいた。  気を失ってしまった彼の首筋にそっと唇を当てた。  跡は残さない。  彼の許可なくしない。  そして悟った。    「俺はお前のモノや」  聞こえてなくても。  ゲームなどなかった。  最初から負けているものは、ゲームにならない。  でも、負けていても良かった。    美しい顔を撫でる。  見なくてもいい。  いいのだ。  この腕の中にある身体が愛しい。    それだけが全てだった。  

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