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第5話
楽しくて仕方なかった。
気を失った彼の汚れた性器を拭いてやるのも、出した液体を片付けてやるのも。
どこでやってもいいように、ポケットに準備している大判のウエットティッシュやコンビニの袋が役に立った。
ここは彼の聖地だから、これ以上はダメだと思ったが、あんな姿にこの手でした直後で我慢など出来ず、彼を抱えて、顔を撫でながら自分で三回した。
たまらなく気持ち良かった。
はじめてしたセックスさえこれほどではなかった。
この身体のぬくもりがある。
それだけで何もかもが違った。
美しい顔は脳に焼き付いた。
絶対に忘れることはないから、だからもう見なくてもいい。
彼が嫌ながら、見なくてもいい。
三回目のオナニーの時に彼が目覚めて、巨大な性器に怯えて叫んだのも可愛いかった。
お前のやのに。
そう思って。
俺の全部がお前のやのに。
彼が嫌がるならしなくていい。
無理はしない。
でもその内。
俺の全部はお前のやから。
受け入れて欲しかった。
「なんもせんからこのままおって・・・」
そんな望みを聞き入れてくれたことに浮かれた。
ただ顔を見られることに怯えているからだとしても。
いつかわかってもらうのだ。
全部、全部、お前のものだと。
そして、側にいさせてほしかった。
またここに来ても良いかと聴いて受け入れられた時、嬉しかった。
顔を見られるのを身体に触られることより恐れていることはあえて考えないことにした。
絶対に顔を見たりしないのだから。
わかってもらえる、そう楽観的に考えた。
自分より彼に優しく誰も出来ないのだから。
いやらしいことはしないことを約束させられたが、いつか解ってもらったら、存分に触るし舐めるからいい、そう思った。
毎日でも彼の側にいたかったが、そういう訳にはいかなかった。
知っていた。
自分がいるのはゲームの世界だ。
相手が何を持っているのか、それも戦略になる。
彼の存在を知られたら他のプレイヤー達が何かしてくるのは目に見えてわかっていた。
自分におこることは何とでもしようがあるし、自分のモノならまだ守りようもある。
どうしようもなければ見捨てるが。
だが彼はものじゃない。
自由に動いていて欲しい。
何かに制限されることなく。
あのまま、そっと。
何かしら対策を考えるとしても、まだ未成年であり、親の保護下にある今は出来ることが限られている。
親も跡継ぎである自分が男を抱いて遊ぶ分には文句はないだろうが、本気となれば邪魔しに来るだろう。
言うことなど聞くつもりもないし、跡継ぎだっていつでも止めてやっても良かったのだが、彼を巻き込まないように時間をかける必要があった。
秘密にしておく。
対策できるまで。
いや、彼は目立つことを好まない。
彼が望めば、ずっと秘密でもいい。
初めての恋に浮かれた。
ガキだったからなんとかできると思っていたのだ。
週に数回。
昼休みの間だけ。
彼を抱きしめた。
抱きしめるだけだった。
話をした。
かえってくる言葉の全てを記憶した。
朝ご飯は和食が好き。
卵焼きと味噌汁があればいい。
本が好き。
学校と家以外では本屋と図書館にいてそれが好き。
図書館の古い本が素敵だったことなどを教えてくれた。
「なんか面白いこと言えや」
そう言えば誰か取り巻きが面白い話をしたし、黙っていても誰かが必死に話しかけてきた。
こんな風に自分から話そうとしたことはなかった。
「教えてや」
質問をかさねる。
それ以外会話のしようがわからなかった。
彼を前にしたら。
本が好き。
綺麗な本が好き。
インプットする。
キスしたくなったらそっと唇を撫でて我慢した。
小さく身体が震えたりしたから、してもいいんじゃないか感じてるし、などと思ったけど我慢した。
まだ駄目だ。
ちゃんと解ってもらってからだ。
彼だけで、彼だけのものなのだと。
顔を撫でてその感触を楽しんだ。
暖かな身体がひたすら愛しくて、この踊場は本当のサンクチュアリになった。
自分の中の思いが熱になって、全て彼の中に注ぎ込まれたらいい、そう思いながら彼に触れ続けた。
ソレとの関係は続いていた。
いきなり切り離すわけにはいかない。
彼の存在をかくすのにもいい。
だから恋人だと名乗るのも許した。
まあ、呼び方は違っても奴隷だ。
それに、性欲を持て余していた。
いくらでもなんでもさせるソレは都合が良かった。
ただ、彼と知り合ってからソレを人前で咥えさせたり、している声を人に聞かせるような真似はやめた。
色々、ゲームの戦略にはそれは都合が良かったのだが、彼はそういうのを嫌いそうだ。
彼は性的に潔癖なのだ。
だからやめた。
色々戦略的に有効でも。
それに、自分でも有り得ないと思ったが、もし彼か自分を受け入れてくれたなら、彼以外抱かなくてもいいと思った。
「オレ以外に触らんといて・・・」
そう泣く彼を思って何度もにやけた。
抱きしめて「お前だけや」そう言ってやるんやと思っていた。
もうこれからは誰にも触らん、そう言って彼を愛してやるのだ。
隅々まで。
ガキだった。
そうなると信じこんでいた。
ソレをうまく追い払えると思っていた。
それもゲームだからだ。
ガキ過ぎた。
何もわかってなんかなかった。
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