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第8話

 諦めねばならないのだ。  諦めねばならないのだ。  「俺は!!俺は!!」  床を叩きながら泣き喚いた。  諦めなければならないのに諦められない。  こんなに好きなのに。  でも、彼をもう傷付けたくなかった。  プレイヤー達は狙いにくる。  自分の弱点になる彼を。  彼を自分から切り離さなければならない。    そういうことだ。  頭では理解した。  でも、心がついていけなかった。  手から血がでるまで床をなぐりつづけた。  彼の父親に黙って殴らせた。  彼の父親だからというのも理由の一つ。  何より、彼を殴れる人間はもうそういなかったからだ。  罰して欲しかった。  彼と同じ顔になるまで切り刻んでくれてもよかった。    でも、彼から引き離される痛みは殴られるよりつらかった。  警備員に引き離される時、思わず抵抗してしまった。    だって彼の瞳が見ていたから。   見つめてくれていたから。  少しでも彼の瞳に映りたかった。  見て欲しかった。    愛しい人。  愛しい人。  とんなゲームでも勝ち取れる自信があるのに、ゲームをしていることが彼を引き離す。  残りの人生が無価値なゲームを続けるだけであることに、むなしさを感じた。  鎮静剤を打たれて眠らされるまで、泣き叫び続けた。  あとのことは知らない。    あえて知らない。  弁護士がどんな話をしたのかも知らない。  父親の言葉は覚えていた。   「オレが生きている限り、お前は二度と息子にちかづけん!!」  その言葉を守ってやるつもりだった。  でも。  でも。  諦めるから。  諦めるから・・・。  一度だけ、もう一度だけ死ぬまでに。  彼に会いたい。  会わせてくれ。  それだけが望みになった。  彼が責めるなと言ったから、ソレを責めることはなかった。  彼の父親もソレには不思議な程に無関心だった。  彼も父親も、ソレに奇妙な感謝をしているようだったと弁護士はが言いに来た。  彼が顔を失ったら結果が息子と父親を再び結びつけたようだと。  だがその言葉を無視した。  聞いてはいたけれど  彼がどうなったかは彼との繋がりを断ち切るために、知りたくなかった。  その無関心さに、弁護士は肩をすくめた。  あれほど騒いだくせに、と思っているのだろう。    彼としっかりここで関係を切り離しておかないと、いけない。  もう狙われないように。    でも、ソレの話は別だった。  ゲームの後始末だ。  有力者の両親をもつ、ソレは、精神的に追い詰められていた結果として、数ヶ月の措置入院で済むようだった。  両親は海外にソレを数年送り、そして全てをなかったことにするだろう。    なかったことにはしない。  そう決めていた。  ゲームの後始末。  きちんとかたをつける  自分に逆らった人間がどうなるのかを教えてやらないといけない。  一生をかけて。  思ったよりも病院から早く出てくるようだった。  ソレがどうなるかは逐一報告させていた。  彼については何一つ聞かなかったけれど。  「俺に逆らったヤツを許すわけにはいかんやろ」  その言葉に秘書は笑った。  頼もしい跡取りだと。  ゲームの世界ではナメられたら終わりだ。  相手に与える恐怖は優位になるのだ。     ソレを迎えに来たのは両親ではなく弁護士で、ソレはおどろかなかった。  見捨てられたのはわかっていただろう。  あれだけしでかしたのだし。  が、家ではなくホテルに運ばれ、そしてその部屋に座っていたのが誰かがわかった時はさすがに驚いていた。  ソレを置いて秘書は消えた。  殺したりはしない、と約束している。  顔を刻んだりもしない、と。  「  」  ソレは名前をよんできた。  「二度と俺の名前を口にするなや」  そう言った。  ソレは白い顔をしていた。  殺されるかもしれないと思っていたのだろう。  膝をつき、命ごいをする。    「あそこまでするつもりは・・・」  ああ、そうだろう。  顔の肉が削りとられる程刺したが、どんなつもりもなかったんだろう。  そして、コイツはどこかでわかっていた。  自分が彼に与えた程の処罰はないことを。  数年病院送りになるくらいだと。  コイツもゲームの達人だから。  「俺の奴隷になるな?・・・ほんなら側に置いたる」  一応聞いてはやった。    ソレは混乱した顔をした。  顔をめちゃくちゃにされるくらいは覚悟していただろう。  でもしない。  彼が責めるな、というから。  そのことでは責めない。  自分に逆らったことのみ責める。  「膝つけや」  命令した。  ソレはフラフラと従う。  足元に跪いたソレに命令した。  「俺の靴を舐めろや」  教えてこまないといけない。  自分が何なのか。  信じられないと言ったような顔でソレはこちらの顔を見た。  その目を平然と見下ろした。  震える目にも流れる涙にも、心が動かなかった。  所詮、ゲームだ。  でも。  床に這いつくばりソレは必死で靴を舐め始めた。  舐められていない方の足で思い切りその頭を踏みつけた。  うめき声を上げたがソレは泣きなから、靴を舐めつづけた。  「俺から離れられないなら、一生こういう扱いや」  冷たく言った。  どんな人生もソレには許さない。  名前もないモノにする。    床の上で犯した。  準備だけは自分でさせてやった。  嫌なら出ていけ、とは言った。   自分から残らないなら意味がないからだ。  思った通り、ソレは出ていかなかった。  ソレは欲しがっている。   手に入れるまで離れない。    手にはいるわけないやろ。  もう俺は彼のもんなのに  そう思った。  髪の毛の一本までも。  彼の物だ死ぬまで。  だがゲームは終わってないのだ。    ソレにとっては。  ゲームとは実に下らない。     そして、奴隷にして思い知らせたいと思う自分もゲームから下りれないのだ。  本当に、下らない。  思い切りソレの顔を床に押し付け、ただ殺意を欲望に変えて貫き続けた。  殺してやる。  殺してやる。  殺してやる。    腰を叩きつける。    服は一枚も脱いでない。    ソレのは白い身体をあますことなく晒して、床の上で涙を流しながら、それでも貫く度に、性器から液体を零しつづけ、身体を痙攣させる。  こんなに酷く扱ったことはなかった。     ほんの少しの思いやりもなく扱った。   だが、確かに気持ち良かった。      憎んでいる相手を傷つけることは、とても気持ち良ことだった。  深く深く貫いて、えぐりたかった。  内臓まで貫いて、腑をえぐって。  そう思いながら、貫き続けた。  ソレを抱いた中で一番気持ちよかった。  憎悪は灼くような欲望を掻き立てた。  殺意を何度も吐き出した。  出しても出しても、止まらなかった。  何の配慮もなく、快楽だけを貪った。    どれくらい時間が経ったのか。  床の上で気を失ったソレをそのままにしてベッドで寝た。  目覚めてもまだいたから、連れて帰った。  そこからずっと、いる。  前途有望だった美しい上級生はもう奴隷になった。    コイツにはもう人生なんてない。  そう決めていた。          

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