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第7話

「はい、宿題は?」 家庭教師を始めて2ヶ月目に突入した。 あの日、僕は渚君にゲイである事を伝えた。 セフレとラブホから出て来た所を、お兄さんに見られた事も…。 「へぇ…」 それでも渚君からの第一声はその一言だった。 「それで?何か俺のカテキョである事と関係あるの?」 って、逆に聞かれたのだ。 「はぁ?」 驚いた顔をすると 「だって、それは恋愛対象が男なだけでしょう?それと俺のカテキョをするのと何が繋がるの? 俺、今までの家庭教師が嫌いだった。自分の為に俺の成績を上げる事ばっかり考えてて…。でも、先生は俺のペースで、俺の事を考えて授業をしてくれてる。俺は、そんな先生だから学びたいって思ったんだ」 真っ直ぐ僕を見つめて答えた渚君に涙が出そうになった。 「そっか…。でも、きみのお兄さんは嫌みたいだから、クビになったらごめんな」 と言った僕に 「先生が兄貴の先生なら仕方ないけど、俺のカテキョなんで問題ないです」 そう言っていた。 お陰様で、それ以降も家庭教師として続いている。 ただ、あのお兄様がそれを許すとはどうしても考え辛かった。 何か起こらなければ良いが…と思っていた矢先に、事件は起こった。  授業が終わり、僕はいつも通り帰宅の途に着いた。駅の改札を抜けて自宅アパートに着く頃、ずっと着けられている気配を感じて、曲がり角で隠れて待っていると、渚君のお兄さんである海が僕を探していた。 「さっきから付け回しいてるの、きみだったわけ?」 呆れて声を掛けると、驚いた顔で僕を見た。 「あんたと…2人で話がある」 顔付きから見て…家庭教師を辞めろとでも言うつもりなんだろうな。 僕は溜め息を吐いて 「じゃあ、うちそこだから入れば?」 そう言って、階段を登った一番奥の部屋に案内して鍵を開ける。 (そう言えば…、この家に人を入れるのは初めてだな…。) ぼんやり考えながら、思い出す。 あの日…、この兄貴と顔を合わせた日は最悪だった。 小関さんが駅まで迎えに来てくれて、そのままラブホに行くのかと思いきや、自宅まで送られてお土産を手渡されて終了。 「え?今日、久しぶりなのに?」 驚いた僕に 「悪いけど、もうお前のセフレにはなれない」 って言われた。 「え?」 「俺は…お前の恋人になりたいんだよ」 真剣に見つめられて言われ、僕が俯くと 「晃が死んでまだ4年…。でも、俺はもうお前と愛の無いセックスはしたくないんだ」 そう言われてしまった。 何も答えられない僕に、小関さんは頭を優しく撫でると 「飯食ったりするのは、今まで通りするから」 そう言い残して去って行った。 そして今日、多分、こいつは僕に渚君の家庭教師を辞めろと言いに来たんだろう。 内容が内容なだけに、外で話す訳にもいかず…。 仕方ないから部屋に入れてやった。 …のに、だ! 「いや、玄関で結構です」 とか言いやがって、カチンと来る。 「何?ゲイの部屋は危なくて入れない?」 嫌味たっぷりに言うと、ムッとした顔をしてズカズカと中に入ってきた。 家で見かけた時は、爽やかな笑顔を浮かべて 「いつも渚がお世話になってます」 とかほざきながら、その目が笑ってないのに気付かない僕じゃないからな! 心の中で悪態を吐きながら、取り敢えず冷蔵庫からペットボトルのお茶を出してそいつの前に置く。 マジマジと見ると、女子ウケしそうな顔をしていた。確か渚君の話だと、学校ではめちゃくちゃモテるらしい。 教師から先輩後輩、同級生にも大人気らしく、渚君が「あんなに猫被って疲れないのが不思議」ってボヤいていた。

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