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第8話
「で、話ってなに?」
リビングに座る一条海に、僕は安心させるように距離を取って入り口に立って声を掛けた。
そいつは僕を睨み上げ
「渚の家庭教師を辞めて下さい」
そう言ってきた。
(はい、ビンゴ!)
僕は心の中でそう呟くと
「渚君は良いって言ってたけど?」
と、返事を返す。
「あいつは世間知らずなんです」
そう言って睨み付けて来るそいつに
「何?僕が渚君に何かするって言いたいの?」
イライラしながらそいつに言うと
「しないとは、言い切れないですよね」
なんて言って来た。
僕は深い溜め息を吐いて
「じゃあ、なに?きみは女性なら、見境無く襲う訳?」
そう訊ねると
「話をはぐらかさないで下さい!」
と言い出した。
「はぁ?はぐらかしてないだろう?じゃあなに?恋愛対象が男だと、僕は家庭教師をしちゃいけない訳?」
「そうとは言ってない!ただ、渚の家庭教師は辞めて欲しいと言ってるだけだ。俺にとって、目に入れても痛くないくらいに可愛い弟なんだ。あんたみたいな尻軽に、渚を近付けて汚したくないんだよ!」
そい言われて、堪忍袋の緒が切れた。
「はぁ?誰が尻軽だよ!汚すって何だよ!」
怒った僕に、そいつは顔色も変えずに
「男と身体中キスマークだらけにして、ラブホから出てくる人間が、尻軽じゃなかったら何なんだよ!汚らわしい!」
吐き捨てるように言い放った。
(…ったく、どいつもこいつも…言いたい放題言いやがって!)
「ふぅ〜ん。なんであの一瞬で、僕の身体中がキスマークだらけだなんて分かったんだよ」
僕は2ヶ月も放置された上に、言いたい放題の小関さんにも、このムカつくクソガキにも腹が立って来た。
偉そうに座っているクソガキの側に歩み寄ると、そいつは目を逸らして
「とにかく、渚の家庭教師は辞めてもらいます!」
と叫んで立ち上がったクソガキの首に手を回し
「分かった。辞める代わりに、条件がある」
そう呟いた。
「条件ってなんだよ」
僕から視線を逸らして話すクソガキの首筋にキスをすると、慌てて僕の顔を見た。
真っ赤な顔をして僕を見た目は、欲情しているのが分かる。
こいつを見てイライラするのは…先輩を思い出すからなのかもしれない。
聖人ぶった面の裏では、結局、そういう事に興味があるのを隠しているだけ。
本当はちょっと揶揄うだけのつもりだった。
「僕とセックスして、よかったら辞めてあげる」
にっこり微笑んで、甘えるように胸元にしなだれかかって上目遣いで顔を見上げた。
跳ね除けられると思っていたのだが…、クソガキは首まで真っ赤にしてカチコチに固まっている。
(ん…?)
反応が予想外過ぎて戸惑っていると、密着させている身体の下半身に、硬いものが当たっている。
「………」
「………おい」
僕は思わず硬くなって僕の股間に当たっているそれをズボンの上から触り
「これ、なんだよ」
そう呟いた。
クソガキは真っ赤な顔で視線を逸らすと
「お…お前が、物欲しそうにするからだろうが!気持ち悪い手を離せよ!」
と、可愛気ない反応を返して来た。
僕は目を座らせて
「ふぅ〜ん…」
そう言って顔をジッと見つめていると、泣き出しそうな顔で視線を逸らしたまま、でも全身で僕を意識していますってオーラを出して固まっている。
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