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第12話

「ん…」 寝返りをうつと、優しい手が僕の髪の毛を撫でる。 (誰?……) ぼんやりとした意識の中、うっすらと目を開けると 「もう少し寝てて下さい…」 そう囁かれる。 ぎゅっと抱き締められ、滑らかなビロードのような肌に手を回す。 安心する匂いに顔を埋め (誰だっけ……?) 考える事を拒否した頭で、僕は再び瞼を閉じる。 その人は優しく僕の髪の毛を撫で、時折頭にキスを落とす。 その仕草は、僕の事を愛おしいと言ってくれているみたいだ。 その手はまるで…大好きだったあの人の手に似ている。 『相馬…』 白衣を着て、ぼんやりと空を眺めていた姿が眩しかった。 僕を助けてくれて、今の進路を与えてくれた人。 大好きで、大好きで…大切だった人 いつも僕の頭を撫でてくれて、優しい笑顔を浮かべていた人 「あ……きら……さ…ん…」 名前で呼ぶ事さえ許されなかった人。 やっと恋人になれると思った日に、僕のせいでその生涯を奪われてしまった人。 頬に涙が伝う。 温かい手が僕の涙をそっと拭う。 涙を舐め取られ、キスをされた。 「泣くな……俺が傍にいるから……」 切なそうに呟く聞き慣れない声。 (誰?なんでそんな切なそうな声を出すの?) 僕は何か言おうとして、再び深い眠りに堕ちていった。 目が覚めて、全身の倦怠感 身体の関節の痛みやら、お尻の違和感。 何より、昨夜の行為の激しさを物語るかのような身体中に刻まれた印と、このガサガサに枯れた声に自己嫌悪に陥る。 (…やってしまった) いくら2ヶ月ご無沙汰で、イライラしたからと言って…、まさか家庭教師(バイト)先の生徒の兄貴とヤッてしまった。 人生初の大失態に頭を抱える。 昨夜は、さすが若者。 萎える事無く、抜かずの3発。 その後は、泣いて懇願するまで突き上げられた。 何度か意識を飛ばしても、激しく突き上げられる衝撃に意識を引き戻される。 『貴方が誘ったんです。意識を失っても容赦しませんよ』 揶揄うように囁かれ、日が明るくなるまで様々な体位で泣かされた。 「もう……無理ぃ……出ない…、出ないからァ…!」 イキ過ぎて吐き出すモノも出なくなり、空イキを繰り返されて泣いて懇願すると 『じゃあ、誓って下さい……』 そう、彼は囁いた。 『俺だけのモノになるって…』 首を振って必死に耐える僕の顎を掴み、力の入らない身体を腰だけ掴まれてバックからガンガン突き上げられながら耳元で囁く。 『俺の恋人になるって……』 確か、そう言われたような気がする。 僕はなんて答えた? 最後にイかされた後の記憶が全く無い。 隣で規則正しい寝息を立てる奴に腹が立つ! ベッドから蹴り落としてやるか! そう考えてみたものの、全身が痛くて(主に下半身)起き上がれない。 イライラしていると、隣で規則正しい寝息を立てるやたら美形の高校生が目を開いた。 「おはようございます」 にっこりと微笑む爽やか笑顔に、昨夜の怒りが込み上げて来た。 「お前!……んぅ…!」 殴ろうとした腕を掴まれて、唇を塞がれてしまう。 ベッドに両腕を押さえつけられ 「まだ分かりません?貴方の体力じゃ、俺には敵いませんよ」 そう言われて見下ろされる。 屈辱な体勢の中、中心部に硬いものが当たる。 「おい……」 「はい」 にっこりと爽やかな笑顔を浮かべているその下で、昨日散々ヤリまくった奴の反応とは思えないモノが当たっている。 片手で僕の両腕頭の上で一纏めにすると 「その掠れた声、セクシーですね。それに…貴方の白い肌に刻まれた俺の印…」 そう言って、昨夜の行為の痕に指を這わす。 「あっ…」 思わず漏れた声に、そいつは先程の爽やかな笑顔の仮面を脱ぎ去り 「又、誘ってるんですか?」 耳元に吐息が触れる位置で囁かれる。 「馬鹿言うな!誰がお前なんか!」 キッと睨み上げて言うと 「そうですか……。だったら、感じない筈ですよね?」 囁かれた後に、耳を舐められて 「やぁ…」 っと、声が漏れてしまう。 そして、昨日の激しいだけでは無く、甘い行為を覚えいる身体は、僕の意志とは関係無く反応を示す。 「ほら、貴方も硬くなってきましたよ」 クスクスと揶揄うように囁かれながら、お互いに熱を持って起ち上がり始めたモノを、押し付けるようにして腰を揺らしながら刺激してくる。 「やめ……ろ……!…あっ…馬鹿…ぁ…」 必死に抵抗してみても 「止めろ?貴方の腰も動いてますけど?」 と言って、くすくすと笑っている。 「口では嫌々言ってますけど、身体は正直ですよね」 彼はそう言って、散々、昨日刺激されて敏感になっている乳首を吸い上げた。 「やぁぁぁぁぁ!」 身体を弓のように仰け反らせ、ちゅうちゅうと音を立てて吸い上げる彼に、両腕を拘束されて為す術もない。 「どうしました?嫌なんですよね?」 唇を離し、吐息が触れる距離で囁かれる。 昨夜、散々刺激されて敏感になっている乳首は、彼の息が触れるだけでも感じてしまう。 乳輪をざらりとした舌でなぞり、口か含んで強く吸いながらぶっくりて膨らんだ乳首を舌先で刺激される。 「あっ……あっ……」 ガクガクと身体が震え、下半身を熱い彼の楔で押し潰されるように刺激をされる。 涙で潤む視界には、僕の両方の乳首を刺激している彼の髪の毛が見える。 気が付くと、彼の腰の動きに合わせるように、僕も彼の楔に自分の立ち上がった楔を擦り付けるように彼の腰に足を絡めて腰を揺らす。 すると、空いていた彼の手がするりと、2つの楔を握り、上下に扱き始める。 「あっ……!」 思わず甘い吐息が漏れると、強く胸を吸われて、お互いの昂りを扱く手が激しく動く。 「だめ……、イッちゃう……だめぇ……っ!」 ビクビクっと身体が痙攣して、僕は精を放った。

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