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第33話

「あ〜…そう言えば、空に消えそうとか言われた事あったな」 ぼんやりと呟くと 「空?」 海がぽつりと繰り返す。 「そう。高校生のガキが『綺麗すぎて空に消えそう』って言ってたのを思い出したよ。高校生でこの口説き文句言うってさ、将来、末恐ろしいと思って聞いてたんだよな。すっかり忘れてた」 『あはははは!』って笑って海の顔を見上げると、海が顔を真っ赤にしている。 「え?」 思わず固まる僕に 「すみません。それ、俺です」 って言われたのだ。 「え?……ええ!」 驚く僕に、海は首まで真っ赤にして 「末恐ろしいガキですみません」 と呟いた。 「ちょっと待て。お前、今、公立高校行ってるよな?」 「はい」 「俺が特別講師をしに行った学校って、私立だったんだけど?」 頭がパニックになっている僕に 「俺、今の学校は編入したんです」 そう答えると、海は僕をゆっくりと抱き締めて 「話を聞いてもらっても良いですか?」 そう呟いた。

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