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第55話

翌日、学校に行くと、大崎に頭を下げられた。 「ごめん!なんか、嫌な思いさせたみたいで…」 そう言われて、俺は苦笑いを浮かべて 「悠斗のせいじゃないだろう。俺の方こそ、お前の先輩を怒鳴りつけたりして悪かった」 と答えた。 俺はあの日に言われた和哉さんの事件が気になって、その日から図書館に通って事件について調べ続けた。 哀しかったのは、被害者で守られるべき和哉さんの事を「男を魅了する魔性の少年」と面白くおかしく取り上げ、非難を浴びるべき加害者は少年A、Bとして守られていた。 記事によると、和哉さんの両親は育児放棄していたらしく、和哉さんは学校給食しか食べられない生活を送っていたらしい。 中卒覚悟の和哉さんを、当時の中学校の担任が両親の祖父母に相談して、和哉さんは父方の祖父母に引き取られて高校へ進学したらしい。 公立の有名進学校に進学して、和哉さんは何度か強姦未遂事件に遭っていた。それを助けてくれた先輩と恋人になり、その後、2人のセフレと関係を持っていたと記事に書いてあった。 結局、恋人とセフレの3人が卒業して、和哉さんは当時の担任だった被害者の小関晃さんと禁断の関係になる。しかし、セフレだった2人が和哉さんとの関係を強要して、それを止めに入った担任教師が惨殺されたという内容で、どの記事も書かれていた。でも、俺は腑に落ちなかった。 俺が知ってる和哉さんは、何人もの人と関係を持てるような器用な人じゃない。 そんな中、地元の新聞紙が載せている記事を見つける。 それには、強姦されて関係を強要された和哉さんを助けようとした担任教師が、強姦していた2人組に逆恨みをされて惨殺されたというものだった。 担任の名前を見て「小関」と言う名前に引っ掛かり、「晃」と言う名前を見て、初めて和哉さんを抱いた日に、和哉さんが涙を流して呼んだ名前だと思い出す。 そしてその地元紙に、和哉さんの後見人兼弁護士の名前に「小関政義」と記入されているのをやっと見つけ出しいた。 名前から弁護士事務所を探し出し、あの日から1週間後の金曜日。 予約を入れて、小関弁護士に会いに行った。 その弁護士事務所は高層ビルにあり、立派な事務所だった。 受付に行き、アポイントの有無を確認され、俺は応接室へと通される。 綺麗なオフィスの中にある、立派な弁護士事務所の代表をしてる「小関政義」を見た時、あのエリート顔した和哉さんとホテルから出て来た男だった事に気が付いた。 彼は応接室に入るなり 「なんだ…ガキか」 と、拍子抜けした顔をすると 「で、俺になんの相談だ?」 そう言って、俺の目の前に座った。 小関弁護士とのアポ取りメールには、「相談」と件名を入れ、小関政義氏に直で相談したい事があると連絡を入れた。 相談料1件30分1万円と書かれていたが、背に腹は変えられない。 「あの…相馬和哉さんの件で…」 そう切り出すと、小関弁護士の顔が変わった。 「お前、なんでその名前…」 と呟いた後、少し考えて 「ちょっと来い」 そう言って席を立つと、俺を「所長室」と書かれた部屋へ案内した。 「入れ」 そう言って俺を中に入れてから、デスクの電話で連絡を入れて 「今日の客、俺の知り合いだったわ。そう。しばらく人払い頼む。あ?そんなの放っておけ」 と話して電話を切った。 「悪い、待たせたな。で、和哉の件で話っていうのは?一条海君」 って言うと、俺を所長室のソファに勧めながら俺の顔をガン見した。 「かず…相馬さんが、大学で酷い誹謗中傷を受けているのを先日見まして、調べさせて頂きました」 そう呟くと、その人はタバコに火を着けて 「で?」 って言いながら、まるで俺の心の奥底を見抜くような視線で見つめている。 「それで…地元紙に書かれている事が真実なら、なんとかならないのでしょうか?」 俺は必死の思いで伝えた。 するとその人は俺を冷めた目で見つめて 「何?お前、ヒーローにでもなるつもり?」 って言われて、言葉を呑む。

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