62 / 86

第62話

翌日、なにやら1階が大騒ぎになっていた。 俺は部屋で謹慎中だったから、部屋から出る事は許されなかったので (騒がしいな〜) くらいに思っていた。 すると渚が部屋を飛び出して 「俺も行く!それで、相馬先生は大丈夫なの?」 と叫んで玄関から飛び出して行くのを聞いた。 和哉さんに何かあったのは分かった。 でも、ここで俺が飛び出したら…。 そう考えて、何も出来ない自分を呪う事しかできなかった。 不安を抱えて部屋に居ると、部屋のドアがノックされてドアが開く。 ベッドに座って頭を抱えていた俺に 「海。小関弁護士から、粗方話は聞いた。何故、関係を強要したと嘘を吐いた?」 と、父さんが呟いた。 意味が分からなくて顔を上げると 「お前と相馬さんが、きちんと付き合っていたと聞いた。恋愛だったら、とやかく言うつもりは無い」 そう言うと、ゆっくり俺の前に座った。 「相馬さんは今、肺炎で入院している。発見された時には意識が無くて、今も昏睡状態らしい」 と言われて、俺は慌てて立ち上がる。 …でも、あぁ…別れたんだって崩れるようにベッドに座る。 俺の様子を見て 「なぁ、海。父さんはお前が例え男性と付き合ったからと言って、闇雲に反対はしない。きちんとお前の話を聞かせてくれないか?」 って言うと、俺を真っ直ぐに見つめた。 「父さん…ごめん…」 俺はそう呟くと、和哉さんとの出会いをぽつりぽつりと話を始めた。 父さんは馬鹿にしたり、言葉を遮る事無く、黙って話を聞いてくれた。 そして最後に 「そうか…。お前も辛かったな」 と、父さんは言って俺の頭を撫でた。 そして 「守ると決めたらなら、最後まで守り抜きなさい」 って、背中を押してくれた。 そして俺の手に紙を握らせると 「相馬さんの入院先と、入院している部屋だ。学校終わりなら小関さんも居ないだろうから、見舞いに様子を見るくらいならして来なさい」 そう言うと 「殴って悪かった」 って言い残して部屋を出て行く。 俺は父さんの書いた紙を握り締め 「ありがとう」 と呟いた。

ともだちにシェアしよう!