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第63話

翌日、2日振りに学校に出席した。 悠斗は俺の顔を見て 「海、お前…その顔…」 って驚いた顔をした。 「ちょっと、、親父に殴られた」 ぽつりと答えると 「それで…どうだったんだ?」 と言って、心配そうな顔をされた。 「ダメだったよ。見事に振られた」 小さく笑って答えると、悠斗が目を見開く。 「嘘だろ!」 俺の肩を掴んで叫ぶ悠斗に 「騒ぐな!」 って一喝してから 「…嘘だったら良かったんだけどな」 そう笑って答えた。 「海…お前、本当にそれで良いのかよ?」 席に座った俺に、悠斗が心配そうに後ろに座って呟く。 「二度と目の前に現れるなって言われたよ」 必死に笑顔を作って、俺はこれ以上この話題をしたく無くて教科書を開いて『これ以上は話しかけるな』オーラを出した。 なんとか一日を終え、俺は和哉さんの病院へ行こうと帰り支度をしていると 「海、俺も一緒に行く」 って、悠斗が言い出した。 「はぁ?お前、何言ってるんだよ」 呆れた顔で言った俺に 「お前のそんな顔、これ以上見てるのは辛いんだよ。協力させてくれよ。」 と言われた。 「悠斗…」 「元々と言えば、俺のせいだし…」 そう言う悠斗の顔が辛そうだった。 「馬鹿野郎!お前のせいじゃないよ」 軽く悠斗の頭をこつんと叩いて、俺が歩き出すと 「ちょっと待った!」 と、関谷と永澤が俺達の前に立ちはだかった。 「どうした?美穂。今日は俺、海と帰るって…」 「酷いよ!」 悠斗の言葉を関川が遮る。 「私だって、一条と友達だと思ってたよ。それなのに、なんで2人だけでコソコソと!」 怒る関川に 「あ、私は個人的興味」 って永澤が付け加える。 「夏美!」 関川が永澤に怒ると、永澤は俺に顔を近付けて 「一条、何故、私に恋人が男だと言わなかった」 そう呟いた。 「そうと知っていれば、とっくにネタにしたのに!」 頭を抱える永澤に 「はぁ?」 と言いながら目を点にしていると、関川が呆れた顔をして 「あれ?知らなかったっけ?夏美、漫研でBL漫画を書いてるの」 って答えた。 「び…BL?」 思わず驚いて叫ぶと、周りの人達がジロジロとこっちを見ている。 「とにかく!まずは病院に行こう」 悠斗はそう言って、俺の背中を押した。 病院へと向かう道中 「一条。全てが上手く行ったら、詳しくお前と恋人の話を聞かせてくれるなら…協力してやる」 にやりと笑って言う永澤に 「詳しくって…」 苦笑いを返すしか出来ない。 こいつ、こんなキャラだったんだ。 病院に着くと、個室の札に『相馬和哉』というプレートが掛けられている。 俺が戸惑っていると 「さっさと行って来い。ここで待っててやるから」 そう言われて、病室の中に入る。 病室に入ると、点滴を打たれた姿で和哉さんが眠っていた。 熱があるらしく、頭には氷枕がされている。 近くに行って、そっと和哉さんの頬に触れてみた。閉じた瞼は開く事は無く、少しホッとした。 「和哉さん…ごめんなさい」 俺はぽつりと呟いた。 点滴に繋がれた手に触れて 「例え和哉さんが俺を嫌いでも、俺があなたを守ります」 そう呟くと、ピクリと手が動いた。 「和哉さん、愛してます」 俺はその手に額を当てて、部屋を後にした。 入り口の前に立っていた悠斗に 「ありがとう」 ってお礼を言って、エレベーター前に待機していた関川と永澤にもお礼を言った。 病院の帰り道、俺は3人に事の成り行きを話した。 「取り敢えず、噂の出所が元カレって事よね」 永澤がそう呟くと 「って言うかさ!そもそも、相田がマジムカつく!」 と関川が唸る。 悠斗は溜息吐きながら 「あいつが男にダラシ無いのは知ってた。でも、普通条件とか出すか?」 って呆れている。 「まぁ…でも、俺がはっきり拒絶しなかったのが悪いから」 そう呟くと 「お前は悪くない」 「一条は悪くない!」×2 と、3人に一斉に言われた。 俺は3人に微笑み 「ありがとう」 って頭を下げた。 すると悠斗が 「ば…馬鹿野郎!お礼とか、いらねぇよ!」 そう言って照れている。 俺がそんな悠斗に笑っていると 「一条、無駄に笑顔を振りまくな!」 って永澤に怒られてしまい、疑問の視線を向けると 「イケメンの笑顔…破壊的」 って関川が呟いて永澤に抱き着いていた。 それを見た悠斗が 「お前!浮気か!浮気なのか!」 と言って、関川の肩を掴んで揺らしている。 「あのね!一条のイケメン笑顔、間近で見て平常で居られる女子は……夏美くらいよ!」 そう叫んでる。 俺が苦笑いすると、言われた永澤は 「私は3次元に興味無いので」 って真顔で答えた。 俺と悠斗は顔を見合わせて笑うと 「失礼ね!なんで笑うのよ!」 永澤はそう言うと、俺の顔を見て 「あんたはそうやって笑ってる方が良いわよ」 って呟いた。 「永澤…」 「そして、早くあんたと恋人の話を聞かせろ!」 「おい、欲望がだだ漏れしてるぞ」 呆れた俺の顔に、3人が爆笑した。 高校生活が、こんなに楽しい生活になるなんて思っても見なかった。 悠斗達と仲良くなって、俺は1人じゃないってそう思える仲間に出会えた事を、心から感謝した。

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