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第64話

翌日、関川と永澤が女子の情報網を使って、和哉さんの噂を流しているのが、和哉さんを地獄に突き落とした張本人。須永正樹だと突き止める。 そして、どうやら和哉さんとの復縁を狙っているらしい。 女子の情報網って、どっから集めてくるんだろう?って程に早くて、情報量が多かった。 俺は小関さんに知らせたくて、メールで連絡した。でも、返信は一切無い。 俺は和哉さんが入院している病院に行って、小関弁護士を待っていた。 会った早々、小関弁護士に殴り飛ばされて 「二度と和哉に近付くな!」 と怒鳴られ、話も聞いてもらえなかった。 それでも俺は逃げるわけにはいかなかった。 もし、関川達が集めた情報が確かなら、須永は絶対に和哉さんに接触して来る。 あいつが今でも「和哉は僕の玩具」だと言っているのだとしたら、絶対に又、和哉さんを地獄へと突き落とす筈だ。 和哉さんが入院して4日目。 父さんから、和哉さんが目を覚ましたと聞いた。 俺は病院の建物を見上げ、和哉さんの回復を祈る事しかできなかった。 外から総合受付に来る小関弁護士を待ち、話を聞いてもらうまで何度も何度も病院に足を運ぶ。 そんな時、悠斗達も小関弁護士と話がしたいと言い出し、一緒に病院へ向かう事になった。 俺は悠斗達に和哉さんへのお見舞いの品を頼もうと思い、本屋へ行って和哉さんの部屋にあった推理小説の続編を購入した。 学校でその話を3人にすると 「直接渡せば?」 って関川に言われる。 すると悠斗が 「バカ!そのなんちゃら弁護士に捨てられるのがオチだろうが!」 と言って関川の頭を軽く小突く。 「そっか…。うん、分かった。でも、本って栞があった方が良いよね。私、凄く良い栞を持ってるんだ。一緒に入れても良い?」 って訊かれた。 「良いけど…」 怪しんでいる俺に、関川が微笑んで 「大丈夫。変な栞じゃないから」 と言うと、文庫本の一つに栞を挟んで何かを祈っているみたいだった。 「私の念、入れといた」 そう言われて 「邪念じゃねぇの?」 って悠斗が呟くと 「2人が上手く行きますようにって、念込めておいた」 と言って微笑んだ。 「関川…」 思わず呟くと 「海、言っとくけど、美穂は俺の彼女だからな。惚れんなよ!」 って冗談っぽく言ってから 「じゃあ、俺も念込めとくよ」 そう言って、何故か文庫本に柏手を打って祈ってる。 呆れて笑うと、永澤も手を合わせて 「2人が上手く行って、上条の恋人に会えますように…」 って言い出した。 「はぁ?」 驚いて叫ぶと 「あんたね!今回、どんだけ私が活躍してると思ってるの?あんた達の話だけじゃ割に合わないわよ。実物に合わせなさいよね!」 そう言うと、俺の背中を強く叩く。 「お前ら、本当に頼りになるよ」 俺はそう言って微笑んだ。  その日の放課後。 4人で病院へ向かい、俺は入り口の外で待っていた。悠斗と関川、永澤が総合受付でお見舞いを手渡し、4人で小関弁護士の到着を待った。 俺はその間も、ずっと和哉さんの回復を祈る事しか出来なかった。 今の俺は、存在自体が和哉さんを傷付ける事しか出来ない。 だったら、姿を見せずに病院を見上げて祈る事しか出来なかった。 そして小関弁護士は悠斗達の話を聞いて、少し時間が欲しいと答えたらしい。 これは後から聞いた話だけど、悠斗達は俺の知らない所でずっと小関弁護士に俺の誤解を解こうとしてくれていたらしい。 そして和哉さんが退院した翌日、小関弁護士から連絡が来て、あの日の事件が起こったのだ。

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