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第66話
朝、目が覚めると海が僕の顔をジッと見つめていた。恥ずかしくて布団に隠れると
「何で顔を隠すんですか!」
って、海に布団を剥がされる。
「だって、寝顔とか…恥ずかしいじゃないか!」
そう叫ぶと
「人の寝顔を散々悪戯してた人が、何言ってるんですか!」
と返された。
僕が何も言い返せないで居ると、海は優しく微笑んで僕を抱き締めると
「可愛い寝顔でしたよ」
そう言って額にキスをする。
僕が唇を尖らせていると
「この後、どうしますか?」
ぽつりと訊かれて
「そう言えば…水族館のチケットってどうした?もう、誰かと行った?」
と、訊ねてみた。
すると海は呆れた顔をして
「ありますよ。和哉さんと行く為にもらったんですから、誰かと行く訳ないでしょう」
って答えた。
僕は海に抱き着いて
「じゃあ、水族館に行きたい!」
そう言うと、海は嬉しそうに微笑んで僕を抱き締めた。
ホテルのラウンジで朝食を取ると、チェックアウトして水族館へと向かった。
ごく普通のカップルみたいなデートが初めてで、隣には海が居て、水槽の魚を見て、イルカショー見てお土産買って帰る。
何も気にせずに手を繋いで歩く海に、僕は海と出会って好きになって…こうして恋人になれた事に心から感謝した。
きっと、昔なら好きな人と離れて暮らすなんて考えられなかった。
でも、海なら大丈夫って思えた。
今、やっと自分の足で歩けているように感じる。
ふと見上げた海の横顔は、出会った頃よりも大人びていた。
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