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第3話

 「ほんなら、帰るわ。明日テストやぞ、オレが言うのもなんやけど休むんだけは無しな」  茶髪先輩は言った。  綺麗に部室をかたづけていた。  シャワー室の前にある洗濯機で床に敷いていたバスタオルも洗い、使用済みのコンドームをゴミ箱のごみと一緒にゴミ袋に入れて。  グランド隅にある焼却炉にほうり込むつもりなんだろう。  あの人をシャワー室へ連れて行ったのも、服を着せたのも先輩だ。  とても優しくあの人をあつかっていた。  もう行為は終わったのに、オレはぼんやりその二人を見続けていた。    「もうちょい休んだら帰るわ」  あの人は寝転んだままだるそうに言った。  「満足したか?」  先輩はあの人の髪を撫でながらいった。  「うん」  あの人は素直に頷いた。  「オレだけにしとけ、言うてもあかんのやろ」  先輩はため息をついた。  「そういうんはいらん」  あの人はぼんやり言った。  「わかっとる・・・今日こんたけしたんやからしばらくはガマンしとけ。あいつらもテストやからさすがにガマンしよるやろからな。オレ以外は卒業も危ないからな」  先輩は笑った。  「ん・・・わかった。オナニーでもしとくわ」  あの人は目を閉じた。     先輩はその唇にキスを落とした。  切なそうにもみえた  「そこの見てたヤツ」  突然言われ、台からころげ落ちそうになる。  こちらを見もしないで言われる。    気付いて気にもしてなかったのだとわかる。  「コイツとしたかったらしてもええけどな、コンドーム使え。絶対に。守らんかったら・・・お前をみんなで犯して動画配信するからな」  そう言い捨てると、ゴミ袋とカバンを手にして先輩は部屋から出て行った  してもいいって・・・。  してもいいって。  どういうことや。   先輩は出て行ったけど、オレは動けなかった。    覗きがバレていたのはともかく・・・、してもええってどういうことや。  オレは窓の外から部室の床に寝転ぶあの人を見ていた。  あの人はぼんやり天井を見ていた。  何もない穴みたい目。  何もみてないのがわかった。       目を開けているだけなのだ。  やはり部屋は暗い水の底だった。  あの人は海の底に沈んだ溺死者みたいに横たわっていた。  ずっと海藻に絡みとられ、そこから動けないみたいに。    ああ、動く気なんてないのだ。        海の底でセックスしてどんなに乱れても。  この人は死体のままなんや。  なんかつらくなった。  わけなんかわからんけどつらくなった。  こんなに綺麗でいやらしいのに。  この人が死体みたいに生きてることが  窓から、部屋に入り込んだ。  何もみていないあの人の傍らにすわった。  あの人はぼんやりこちらを向いた。  「・・・したいん?ええで。あいつもそう言うてたし」  穴みたいな目がオレを見た。  見てるのに見てなかった。    なんか泣けてきた。  「せえへん」  めちゃくちゃしたかった。  穴みないな目は欲望をそそる。  何してもよいような気にさせる目だ。  他の男が突っ込んだ後の穴にぶち込んで、貫きたかった。  一番奥まで挿れてだしたかった。  めまいがするほどしたかった。  でも、したくなかった。  「せえへん」  オレは言った。  でもあの人の髪を撫でていた。  「気持ちええのに。オレのはスゴイええらしいで」  あの人が少し笑った。  オレの指を拒絶することなく。    したくてたまらなかった。  気持ちええやろう。  どんな感触なんやろう。  でも。  「せえへん」  オレは股間を膨らませながら、言った。  したくて、したくて。  でも、したくなかった。  「変なヤツ」  あの人は目を閉じて笑った。  その微笑みは、普通の少年ぽくて。  オレは安心した。  オレは長い時間あの人の髪を撫でていたのだと思う。  股間を膨らませたままで。  それから、何故かオレは、「見る」ことになった。  「したくないけど、見るのは好きなんか」  何故かあの人が呼んでくれるようになった。  LINEがくる。    いまからするからおいで、と。  場所はアチコチだ。   あの人の部屋か、部活が終わって人がいなくなった部室が一番多かった。  部活が終わってからの時間帯。  慌てて駆けつけると大抵もう始まっている。   茶髪先輩がいる時もあるし、いない時もある。   するのは三人位が多かった。  メンバーは10人位で固定されていた。  水泳部の部員たちだとわかった。  今日は二人。   部室だ。  茶髪先輩と,誰かだ。  茶髪先輩が脚に肩を担ぎ上げあの人の穴を舐め、逆向きにまたがったもう一人、運動部らしい短髪があの人の性器を咥え、あの人も、短髪の性器を舐めている。  三つの身体が絡み合っていた。  オレは今では窓からではなくドアから入り、側でそれを見る。  ズボンを脱ぎ捨て、自分のモノを扱きながら。  ぺちゃ    ぺちゃ  茶髪先輩がなめる。    短髪は先輩とおでこを付け合わせるようにして、あの人の性器を舐める。      ああっ  ええ    ええっ  それ好きい  口から短髪の性器をこぼしなからあの人が叫ぶ。     ただ、この乱れきったセックスにはたった一つだけルールがある。  コンドーム着用なのだ。  咥えられた性器には着用されている。  これが守れるメンバーだけがこの人を好きにしていい。  あの人はどうでも良さそうなのに、この人をめちゃくちゃに犯す連中はそれをだけはまもるのだ。  いや、それだけではない。  どんなにめちゃくちゃにしても、このメンバー達はこの人を見下したり罵ったりはしないのだ。  普通、いや、こういう普通はないやろうけど、こういう場面で、あの人みたいな人がされるような言葉はない。  短髪は必死であの人のを咥えてる。  茶髪先輩も、舌で舐めとかしている。  好き  好き  そこ好きぃ  あの人は声を上げて身体を蠢かせる。  二人はあの人の身体に夢中だった。  もちろん貪るために。  でも、あの人に快楽を与えたがっていた。  単なる、肉体を弄ぶのとはちがった。  違ったんや。  「・・・先輩」  苦しそうに短髪が叫んだ。  夢中でコンドームをつけた性器をしゃぶりながら。    先輩  先輩  先輩  そう呼ぶ声は痛々しくさえあった。    茶髪先輩は優しく優しく舐めとかす。  舌の動きは甘い位だ。  気持ちええ  ああ、気持ちええ  あの人は身体を揺らす。  水の中みたいに。  わかった。  わかってしまった。  この人を抱いてる人達は。  本当にこの人が好きなのだ。  どういう風に好きなのかはわからないけど。  この人を好きに抱きながら、それでも・・・まだ、友達なのだ。  茶髪先輩が尻を、短髪が喉を犯し始めた。  あの人の白い身体が蠢く。  水泳部の褐色の肌があの人を弄ぶ。  「後ろも喉も・・・突いたるからな。気持ちようなり」  茶髪先輩が優しく言った。  うぐっ  あの人は苦しげに顔を歪ませ、でもコンドームをはずされた性器からボタボタと垂れ流しながら、身体を揺らす。  ゆらゆらと水の中みたいに。   痙攣する身体が快楽を感じていることを教える。  「  先輩  先輩!!」  短髪はうわずったように叫び、あの人の喉深くを犯していく。  空気がないのはコイツの方だ。  苦しそうなのはコイツの方だ。  茶髪先輩は深いところで腰を動かしているようだった。  先輩もどこか苦しげだった。  何度も何度も震える白い身体。  たちあがった性器からこぼれ続ける精液。  あの人の喘ぎが水泡みたいにもれていく。  オレは夢中で自分のモノを扱く。   また出た。  たまらなかった。  一緒に優しくあの人を犯したくて。  でも、したくなかった。  だから、自分でするのだ。  あの人を見ながら。   「どうしてほしい?言うてみ?」   茶髪先輩があの人の頬を撫でながら言う。          今は短髪があの人の尻に背後から激しく突き立てている。  喘ぎ震えるあの人を下から抱きしめながら茶髪先輩は囁く。  ああっ  イくっ  短髪の突き上げにあの人は叫んだ。  浮き上がる身体を抱きしめ、茶髪先輩なあの人の乳首を吸う。  短髪が身体を震わせ、射精したのがわかる。  あの人は身体をくねらせた。  ゆらゆらと海中のイソギンチャクのように柔らかに揺れる身体を先輩は逃がさないように抱きしめる  「なんでもしたる、言えや」  優しい声だった。  二本欲しい  二本挿れてぇ  あの人が涎をたらしながら言う。  腰を揺らして、達したばかりの短髪のモノを絞りとっている。  呻いたのは短髪だった。    「ああ、したがってたな」  先輩が低く笑った。  先輩は繋がったあの人ごと短髪を押し倒した。  背後から貫かれたままのあの人の脚を広げ、短髪と上下で身体を挟み込むようにして、短髪のを咥え込んだ穴にゆっくりと自分のモノをねじ込んでいく。  そんなことが出来るのかと、ガン見してしまった。  あんなとこに、二本も?  そんな。  そんな。   でも、はいった。  ああっ  ああっ  入ってくる・・・  気持ちええ  あの人がしろい喉をそらした。  その喉を背後から短髪が夢中で齧っていた。  「先輩・・・先輩」  痕がつくまで吸う。  「あんま痕つけたんな」  苦笑しながら茶髪先輩が言う。  そう言いながらキツそうに眉をひそめた。  2つのモノがあの人の中に入っているのだ。    こすれる  2つ擦れてるんや  すごいすごい・・・    あの人が喘ぐ。  水面を求めるかのように両腕が上にむかって伸ばされ、揺れる。  ええ  ええ  あの人は髪をふりみだす。  「ああ、オレも人のチンポと擦れるあうのがいいなんて、お前の中だけやぞ」  複雑そうに先輩は言った。  先輩も短髪もあの人の上と下で動き始めた。  あの人はただ身体を痙攣させていく。    ああっ  好きぃ  これ、好きやぁ  いっぱい入ってる  たくさん擦れとる  あの人は泣き叫ぶ。  先輩も短髪ももう余裕なんてなかった。  3人の声が乱れる。    もっとしてぇ  先輩、先輩  くそっ、たまらへん   海底の骨のない生き物達が絡み合うように手足が絡み合い、揺らぎ続けていた。  ここには空気がない。  空気が無いのだ。   あの人だけが水底で呼吸していた。  先輩も短髪もただ溺れていく。    彼らと共に自分のモノから迸せながら、苦しくてたまらなかった。  加わりたくて、加わりたくない。  でも、目が離せない。  して  もっとしてぇ  あの人の声が脳を焼いた。        

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