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第45話 ②*
俺の手が、ぬるぬるした液体で濡れていく。
くびれの部分を執拗に攻められていることを意識すれば、俺も同様に貴臣の手を汚した。
「はぁっ……ん…っ……ぁ……!」
そんな時、玄関の鍵が回る音が聞こえてハッとなった。
父か母、どちらかが帰ってきたようだ。
貴臣もそれに気付いたようで、少しだけ手の動きが鈍くなった。
いきなり二階へ上がってくるようなことはないが、変な声を出していれば怪しまれるし、穏やかにしていられない。
だがもう、途中でやめることはお互いできない。
「兄さん、少し声を抑えて」
「ん、わか……った……」
貴臣は手の動きを再開させたので、俺も唇をぎゅっと噛みながら貴臣のを夢中で上下に擦った。
先端の窪みを人差し指の爪先で引っ掻かれてこじ開けるようにされると、「あぁっ」と一際大きな声が出てしまって焦った。
「これ、気持ちいいです? 先っぽぐりぐりされるの、好き?」
「ん……だめっ、そんなの……したら……っ声出ちゃ……っ」
「我慢してください」
「んっ……ふぁっ、ん……!」
貴臣がカリカリとこする度に、腰が砕けて鼻にかかった甘ったるい声が漏れてしまう。唇も足もガクガクしてきて、もう歯止めが効かなくなっていた。
もう無理……!
そう訴えると、貴臣の熱っぽい声が聞こえた。
「では口を、塞ぎます」
「え……?」
「どうか先輩だと思って、許してください」
急に重ねられた唇にびっくりして、目をぎゅっとつぶった。
後頭部を押さえつけられ、貴臣の舌が唇を割って中に潜り込んでくる。
口移しの時以上に激しく、口腔を蹂躙している。
顔の角度を変えられ、じゅ、と唾液の音が響くと、頭のてっぺんから電流を流されたみたいに甘く痺れた。
俺も舌を動かして、貴臣に必死に食らいつく。
「──んっ……ん……ッ……は」
好き。好き。
何度もそう思うと、手の動きも早まる。
最後の追い上げが始まった。
口が塞がれて息をするのが大変だ。
でもいま口を離したら、絶対に絶叫してしまう自信がある。
深く口づけをしたまま、俺は欲望を解放した。
「ん──……! ……む、ん、んっ……!」
白濁を吐き出しているうちに、俺の手の中にも熱い液体が#迸__ほとばし__#る。
俺たちはほぼ同時に達した。
2人分の唾液で濡れた唇が離れていき、ゆっくりとアイマスクが外された。
眩しくて視界がぼやけている。
目が慣れると、貴臣が柔和に微笑んでいるのが分かった。
「あ……たかおみ……」
「兄さん。レッスンもあと少しですね。最後まで一緒に頑張りましょう」
「うん……がんばる……」
「先輩とお付き合いするまで、そんな蕩けた顔、誰にも見せたらいけませんよ。うっかり惚れられてしまいますからね」
「うん……分かった」
だったら貴臣が惚れてくれ。
白んだ頭でそんなことを思っていたら、貴臣の顔が降ってきたのでまた目を閉じた。
もう口を塞ぐ必要はなかったのに、しばらくお互いの唇を味わっていた。
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