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第47話 秋臣の告白①
廊下の人混みをかき分けて外に出ると、他のクラスの奴らに声をかけられ、押しに負けた俺と秋くんはチョコバナナを購入した。
ホワイトチョコにカラーシュガーがふんだんに振りかけられているそれは、インスタ映えしそうなくらいに綺麗だった。秋くんはそれをスマホで撮影していた。
「文化祭って面白いね。さっき焼きそばも食べたけど、すっごく美味しかったよ」
「ここには1人で来たの?」
「友達と一緒だけど、他に見たいところがあるからって」
「そっか」
チョコバナナを口にしながら世間話をした後に切り出した。
「貴臣の文化祭には、行かなかったの?」
秋くんは少し動きを止めて、やっぱり面倒そうに口にする。
「行かないよ。招待状受け取らなかったじゃん」
「これから行ってみれば? 4時までやってるから」
「ねぇ、怜くんってさー」
「な、なに?」
「なんでそんなに躍起になってるの?」
「いや、だってほら、秋くんが貴臣と話すようになってくれたら嬉しいなって」
「話すようになったら嬉しいって、それ怜くんの気持ちだよね? 怜くんのエゴを押し付けられても困るんだけど」
「う……」
「なんか言われたの? あいつに」
今までにないくらいに機嫌を悪くさせてしまって、申し訳なくなる。
だがこのままいけば、下手したら一生2人は話さなくなってしまう。そうなったら寂しいと純粋に思ったから。
「この間、聞いたんだ。貴臣が秋くんのプリンを食べちゃったのが原因で、話さなくなったって」
「ふーん」
「本当は、プリンのことで怒ってるわけじゃないんでしょ? 貴臣も言ってた。火種はきっと別のところにあるんじゃないかって。俺で良ければ、理由を話してもらえないかな?」
秋くんに嘘を吐かれるのが面倒だったと言っていたことは伏せておいた。
秋くんはモソモソとバナナを口にしながら、何かを考えている。
また怒られるかと思ったが、予想に反して弱々しい声で返された。
「言ったってどうせ、1人っ子の怜くんには分かんないよ」
なんて言ったらいいのか分からなかった。
やんわりと拒絶されたんだと思うと胸が痛くなる。
俺はもともと1人だった。
中1の途中まで自分のペースを乱されることなく、親からの愛情をひとり占めしてきた。
生まれたときから歳の近い兄貴と一緒にいた秋くんと俺では、根本的になにかが違うのか。俺では力になれないのか。
一瞬でそんなことを考えたけど、それはすぐに反骨心に変わった。
俺はメラメラと闘志を燃やしながらスクッと立ち上がり、秋くんを見下ろす。
「初めから諦めないで、言ってみてよ!」
「え、どうしたの怜くん」
「言ってみて、それで本当に俺が分かんなかったら項垂れてよ! やっぱり分かんなかったじゃんってバカにしてもいいし!」
「怜くん怖い。そんな血まみれの顔で怒んないでよ。呪いかけられてるみたい」
「……」
流石に恥ずかしくなった俺は、大人しく腰を下ろして小さくなる。
ちょっと熱くなってしまった。この盛り上がる文化祭の雰囲気に気持ちが持っていかれたのかも。
唇を噛んで俯いていたら、秋くんは笑って俺の顔を覗き込んできた。
「怜くんって熱血教師みたいだね」
「ご、ごめん、強く言っちゃって」
「ううん、いいよ。お蔭で心動かされたから」
「……本当?」
「うん。俺がなんでおにぃと喋んないのか、教えてあげたくなった」
貴臣のこと、お兄 って呼んでたのか。初めて聞いた。
俺は言葉の続きを、ドキドキしながら待つ。
秋くんは逡巡したのち、はっきりと言った。
「俺、本当はお父さんの子供じゃないんだよね」
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