61 / 124

第61話 おセンチな気分*

 頭を固定されたまま、貴臣の腰が緩やかに揺れた。  俺の口で、貴臣がイこうとしている。  優しい目を俺に向けながら、絶頂に向かっていってる。  それは至福の時で、今地球が滅亡しちゃってもいいって本気で思えた。    身体はイくことを望んでいるけど、心は望んでいなかった。  だってイっちゃったら、レッスンは終わってしまう。  次のレッスンで、もう最後だ。  貴臣とこうして触れ合えるのもあと少し。    卒業式間近のセンチメンタルな学生のような気分になって笑えたけど、限界を迎えた俺は、自分の手の中に白濁を出した。  その後を追うように、貴臣も俺の口の中で果てた。  思ってたよりもさらさらした滑らかな舌触りの液体を、躊躇なく飲み込む。  貴臣は目を見開いて、俺の口の中に親指を突っ込んでかき回した。  液体をかき出そうとしたみたいだけど、口腔には何も残っていない。 「どうして飲んだりなんか」 「そんなこと言うなら、お前だって」 「俺はいいんですよ。兄さんがそんな無理をする必要は」 「無理してねぇよ。それより、勝手にアイマスク外してんなよ。恥ずかしいだろ」 「すみません、どうしても見たくなってしまって。初めてですね。お互いのをちゃんと見たまま、二人でイったのって」  貴臣は俺の濡れたものをティッシュで拭って、俺は貴臣のものを綺麗にしてあげた。  やっぱり、イった後って冷静になっちゃうから好きじゃ無い。  俺たちは兄弟だっていうのを再認識させられる。  それを拭き終えると、変な空気が流れた。  お互い、相手の出かたを待っているように見つめ合ったままだったけど、先に動きを見せたのは貴臣だった。  背中に手を回され、俺の顔が貴臣の胸の中に埋まった。  レッスンを終える度、だいたいこうして抱きしめてくれる。  でもこの行為も、もうされなくなるんだ。  そう考えるとやっぱり切なくなって、じわっと涙が滲んだ。    いつもは何か一言あるのに、今日の貴臣は無言で俺の頭を撫でているだけだった。  トクトクと、2人の心臓が鼓動する音が響く。  このまま一緒に溶けて、1つになっちゃえばいいのに。  そんな時、貴臣は言った。 「俺たちが、血の繋がった本当の兄弟だったら良かったんですかね」 「え?」 「血の繋がりがあったら、こんな風にならなかったんですかね」  貴臣も、おセンチになっているような声色だった。  こんな風にって、レッスンのこと? こうして抱き合ったりって意味かな?  これも、どう言ったら正解なのか分からなかった。  血が繋がっていたとしたら、少なくとも俺はきっとお前を好きになることはなかっただろう。そしてこんなに悩まなくて済んだ。  貴臣は、俺と血が繋がっていれば良かったと思っているんだろうか。    貴臣の問いかけに肯定も否定もしないまま、俺は貴臣の背中に手を回して甘い香りを嗅いでいた。

ともだちにシェアしよう!