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第78話 悲しみのエロレッスン②*
「あれほど、蕩けた顔を他人に見せたらダメだと言っておいたのに……」
貴臣に独り言のように呟かれて、ハッとする。
指を引き抜かれ、代わりに機械的な物がそこにあてがわられた。
「潤んだ瞳で眉尻を下げて……そんな顔を、あろうことか秋臣の前で……先輩が相手だったら文句もありませんけどね……こっちの気も、知らないで……兄さんは本当に……」
ひどい人ですよ……。
そう言った貴臣の声が揺れていた気がした。
振り返ってみようとしたけど、ずずず、とバイブが入ってくる。
強烈な圧迫感で息がつまり、シーツをぎゅっと握りしめた。
「あ、あ──………っ、ん……っ」
中が擦られながら、奥まで届く。
粘膜を擦って伝わるその感覚は久しぶりで、細かく振動を開始されてすぐに達してしまった。
太腿を震わせながら、白濁をシーツの上にパタパタと撒き散らす。
イっている最中はもちろん、欲望を出し切った後でもバイブの振動は止まらなかった。
「あっ……今、イって……っ」
「早いですね。ではあと、2回イけたら終わりにしましょう」
イきたくないのに、体は勝手に従順してしまう。
貴臣はどうして、こんなに怒るんだろう。
俺が秋くんの前でそんなに変な顔をしてたってのか。
だから何でそれで怒るんだよ、勘違いしちゃうだろ。
俺のことが好きだから、秋くんとあんな風にいたのが許せないんだって。
弱にしたり強にしたり、いろんなやり方で俺を絶頂まで持っていった。
もう1度欲望を放てたのはすぐだったけど、それで波がさぁっと引いてしまい、ペニスは張り詰めているのになかなかイけなかった。
たぶん、いろんなことを頭で考えているから、体の方も混乱しているんだ。
「あ……ぁっ……」
「……」
静かに視線が突き刺さる。
快感を拾えなくなったら、ひたすらこの状態が辛く、苦しいものになってきた。
はやく止めて、抜いて欲しい。
「ん……あぁ……ん……た、か……っ」
枕から顔を上げ、後方を向く。
でも貴臣の顔は見えなかった。貴臣の手がぎゅっと拳を握ったのだけは見えたけど、水の底から見ている世界は滲んでいた。
「も……やめて……ほし……ごめ、ごめんね……ッ」
──好きになっちゃってごめんね。
いつまでも、諦められなくてごめんね。
もう俺は、今日限りでお前のことを吹っ切るよ。
だからもう、こんな風にいじめないで。
「何に対して謝っているんですか」
それもやっぱり答えられないけれど、俺はずっとすすり泣きながら『ごめんね』と言い続けた。
何回目かのごめんの後、貴臣は無言のまま静かにバイブの電源を落として引き抜いた。
開放された俺の体は、くずおれるようにしてベッドに落ちる。
手首のネクタイも解いてもらったけど、くっきりと跡が残っていた。
「そんなに泣かせてしまって、すみません」
贖罪のようにそう呟かれ、手首をさすられる。
俺の体と顔を丁寧に拭ってくれている貴臣と、俺は1度も目を合わせられなかった。
最後にタオルケットを掛けてもらっている時、ようやく優しい声が降ってきたけれど。
俺はやっぱり、涙を止められなかった。
「──これで、全てのレッスンは終了です。本当に、お疲れ様でした」
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