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第86話 onany披露 練習の成果*

 先輩が唇を噛んで首を縦に振ったので、俺は自分で着ていた上着に手をかけた。  トレーナーとインナーを捲りあげ、小ぶりな乳首を露わにする。  目の前で俺をじっと見つめてくる先輩。  俺は羞恥で耐えきれずに目を瞑り、両手を胸の所へ持っていった。  体は火照っているのに、指先は冷たい。  ひんやりとした感触が2つの蕾をかすめて、勝手に喉が鳴った。 「はっ……ん、」  胸はぺったんこだけど、膨らみがあるかのように手をやんわり動かし続けて、指の腹で突起にちょっとだけ触れてみた。  ピクンッと肩が跳ねる。  ピリッとした甘い電流が、足の間に向かって駆け抜けた。 「ん……っ、ふっ……ん……」  爪を立てて、カリカリと引っ掻くようにするとますます電流が流れて、鼻から甘ったるい声が漏れる。   シーツの上で足を動かすと聞こえる、衣擦れの音。自分の心臓の音。息づかい。  エロティックな状況に、だんだんとペニスが反応していった。 「中田、マジでエロい」  先輩がごくりと唾を飲み込んだ。  俺はまた、胸への愛部を丁寧に続ける。 「んー……、っ……」  爪で引っ掻くのをやめて、親指と中指でそれを強めにぐにぐにと潰してみた。  ぎゅっぎゅっと押したり引っ張ったりすると、乳首もあっという間に芯を持つ。 「あーちょっと待って……やばい……俺、そんな姿見せられたら……すぐに理性吹っ飛んじまうよ」  先輩は口元に手をあてながら余裕のない声を出し、俺の行いの一挙一動を見逃すまいと目を凝らしている。  先輩も一緒にしていいですよ、という言葉は口から出てこなかった。  貴臣の時は言えたのに。 「あ……っ……や、ん……」  そうだ、声。  さっきから出さないように唇を噛んで我慢していたけど、聞かせた方がそそられるって貴臣が言っていた。  だからなるべく声を出して、気分を盛り上げるようにした。 「はぁっ……ぁ……あ」 「我慢できなかったら、下も触って、いいからな……っ」  先輩は興奮してくれているみたいだ。  良かった。貴臣とのレッスンは無駄じゃなかったんだ。  すぐに俺は、ウエストがゴムになっているズボンの中に片手を突っ込んでペニスをきゅっと握った。  完勃ちしていると思い込んでいたのに、ほんの少ししか硬くなっていない。   あれ、どうしてだろう。  くびれの部分を指で刺激したり、根元から先端へ向かって何度も扱いてやるのに、いつもよりも快感が得られなかった。  先輩の前だから、緊張してるのか。  こんなに感じている(ふう)なのに、まだこのくらいの硬さだって知られたら変に思われる。  早く早く。 「ん──……」  軽く目を閉じて、快感を拾おうとするけれどうまくいかない。  先輩は、こっちが焦っていることに気付いていないみたいで、俺の頭を優しく撫でてくる。 「イきそう? 中田」 「ん……っ、せんぱっ……」  目を開けると、なぜか先輩がぼやけて見えた。  あぁそうか、涙が出てきて滲んでいるんだ。  これはきっと快感から来るものだ。  先輩は俺の頬に優しくキスを落とし、耳元で囁いた。 「どこがイきそうなの? 教えてよ」  俺はカーッと頭を沸騰させながら、唇をわななかせる。  言うのをためらっていると、先輩は笑って「ごめんごめん」と謝った。 「じゃあ、『先輩』じゃなくて、名前で呼んでよ」 「……え?」 「たかお、イきそうって言ってよ」 「…………たかっ……」  ──貴臣。  それからますます、涙が込み上がった。  貴臣。貴臣。  今まで沢山、エロいことを一緒にしてくれたおとうと。    どうしてお前、ここに来ないんだよ。  俺が今どこにいるのか知っているくせに。  秋くんの時みたいに、息を切らして駆け付けてくれよ。 『兄さんはやっぱり、俺とレッスンを続けましょう』って言えよ。    タイミングよく、家のインターホンが鳴ったりはしなかった。  貴臣がそこの窓をかち割って突入してくる気配もない。  ……そんな妄想ばっかりしている時点で、俺はもうダメだ。  俺はペニスから手を外し、涙の雫をまわりに弾けさせながら言った。 「相良先輩。ごめんなさい。本当に……ごめんなさい」

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