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第99話 お兄のキャラ
「マジ? ほら言ったじゃん怜くん。あんなに必死になってるお兄、俺見たことなかったもん。じゃ、付き合うってことね。それをわざわざ言いに来たってこと? マジでしょうもないね。勝手にすればいいのにさ!」
秋くんは早口で言って、ベッドにどかっと腰を下ろす。
めちゃくちゃ怒ってる。きっと心の中でいろんな感情と戦ってるんだ。
自分は先生との関係をダメダメ言われているのに、俺たちは付き合おうとしている。どちらも既婚者ではないけど、世間的にはたぶんアウトな俺たちが。
「ごめんね秋くん……俺……」
「どうして怜くんが謝るの? 良かったじゃん、大好きな人と一緒になれて」
「……」
なんて言えばいいのか。
うまく言葉が出てこない。
謝るのも、なんか違う気がしてきた。
悶々としていると。
「秋臣にはちゃんと言いたかったんだ。大事な人だから」
貴臣は秋くんに向かって頭を下げた。
秋くんは両眉が釣り上がるくらいに目を見開いてビックリしたみたいだが、すぐに冷静になった。
「もう話は済んだでしょ。帰ってよ。それでもう会わないから。どうぞお幸せに」
「また来るよ。たまには一緒に飯でも食おう」
「話聞いてた?!」
「秋臣も、俺たちの家に来ればいい。今度は無視しないから。お前が嫌だって言っても、話しかけ続けるから」
「お兄?!」
うおー、と秋くんは頭を抱えた。
グイグイと来る貴臣を見て混乱しているのかもしれない。
「なんなの? お兄そんなキャラだっけ? いくら怜くんと気持ちが通じ合って舞い上がってるからって馴れ馴れしくない?」
「馴れ馴れしくしていいだろ。だって俺たち兄弟なんだし」
「……ふふ、そうだね。兄弟ね」
秋くんは自嘲気味に笑っている。
俺の直感は、今日のところは帰った方がいいかも、だった。
秋くんにはちゃんと話せたし、あまり長居しても困らせるような気がした。
「秋くん、俺たちそろそろ」
「お兄と俺、お父さん違うんだって」
秋くんに被せられて、ひぇっと変な声が出た。
ま、マジ? 言っちゃったけど……
俺はあわあわとして、秋くんと貴臣を見比べる。
貴臣の反応はない。
「誰か分かんないんだって、俺のお父さん。それさ、離婚するちょっと前にお母さんに直接言われたんだぜ? 分かる? この気持ち。あ、お兄はちゃんとあの2人の子らしいから安心して」
「……それで、許してくれなかったのか? プリンの時」
「……」
秋くんは、つい言っちゃったなって表情をしながら唇をかんで俯いている。
本当は言わないつもりだったんだろう。
貴臣を困らせたかったのか。
けれど貴臣は困った顔は微塵も見せていない。
凛としたまま、秋くんの手を引いて立たせた。
「秋臣」
貴臣はふわっと、秋くんの体を包み込んだ。
またハグだ。
秋くんは貴臣の肩口に顔を埋めながら、じたばたしている。
「だからさっきから抱きつくのやめろよっ! マジで寒気すんだけどっ!」
「知ってたよ」
「知って……は?」
秋くんは宙を見つめながら呆然としている。
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