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第111話 大好きな人①*

 貴臣の背中に手を回して、爪を立てた。  しっかりと腕で支えていないと床に落ちそうになるほど、体の力が抜けていく。  貴臣は俺のパジャマのボタンを1つずつ外していった。 「あ、そういえば……あの時お前に破壊されたシャツ、捨てたからな」 「えぇ? 勿体無い」 「生地もビリビリに破けてたんだよ……ていうかマジであれ気に入ってたんだからなっ!」 「ふふ、すみません。今度俺が選んでプレゼントしてあげますから、許してください」  いや、許さん……と言う前に俺の顕になった乳首を口に含まれたので、反論できずに終わった。  歯で甘噛みするようにそこをキュッと刺激されて、ジンとした痺れを感じて唇を噛む。 「んっ、ん……んん」 「すごく甘くて美味しい。風呂場で蜂蜜でも塗ってきました?」  今度は乳輪をペロッと優しく舐められる。次は突起の先を歯で甘噛みされ、また舐められる。  飴と鞭みたいに交互にやられると、前だけじゃなくて後ろも切なくなってきた。ヒクヒクとそこが疼いて仕方ない。 「あー……」  ペニスを貴臣の腹部にぎゅっと押し付けたまま、腰を前後に動かした。気持ちいい。前も後ろも、引きつった布に擦れてくい込むと気持ちがいい。  貴臣の頭にしがみつくように手を回しながら、腰を振り続けた。  隆起した存在はとっくに感じているはずなのに、それでも貴臣は前を触ってくれようとせず、ひたすら乳首や首筋に舌を這わせるばかりだ。 「……さわ……っ……て」  我慢できなくなった俺は、眦に涙を滲ませながら貴臣の耳元で懇願する。  貴臣は、はぁっと熱い吐息を吐き出して顔を上げた。 「まさかそんな風に、おねだりしてくる兄さんを見れるだなんて。夢のようです」  そのまま貴臣は、俺の口腔に指を突っ込んで掻き回した。  親指と小指以外の指が入れられて、激しく動かされるせいで唾液が口の端から一筋漏れた。 「ぁ……っ、あぁ……」 「可愛くおねだりできたのでちゃんとご褒美……と言いたいところなんですが、やっぱりいじめたくなってしまうのは優越感と独占欲に浸りたいからなんでしょうね」  貴臣はなんだか1人で喋りながらも、ようやく俺の下腹部へと手を這わせた。  ペニスを包まれる感覚を想像しただけで鳥肌が立つ。  だが手は前ではなく、後ろへ回された。  下着の中に手を入れられ、唾液で濡れている指で後孔の入口をノックするようにトントンとされた後、中にズズッと潜り込んできた。 「あぁ……っ!」 「あれ、どうしてこんなにすんなり入るんだろう」  いきなり2本、しっかりと奥まで入ったことを確認した貴臣は、恥ずかしくて俯く俺の顔をわざと覗き込んでくる。  最奥で指を曲げられると、先走りが押し出されるように溢れ出す。パジャマにはもう、お漏らししたみたいに丸いシミができていた。 「ほら、前は触っていないのにこんなに濡らして……後ろだけでイけるんじゃないですか?」 「ん……っイけな……っ」 「それにすごく柔らかいし……自分で慣らしてきました?」 「……いっ一応……っ……だってお前がっ、毎日でも……したいって言うから……っ一応……ッ」  緩急を付けながらじゅ、じゅ、と指を抜き差しされて、声も体も震える。震わせながら、慣らしてきたのは仕方なく、と貴臣に文句を言う。   「あぁそうですね。そういうことにしておきましょうか」 「ちが……っ、ほんとに……ッ」 「ほら、聞こえますか? 兄さんのここからくちゅくちゅって、水をかき混ぜてるみたいな音」 「やだ……ッ……わな……でっ……」 「兄さん、さっきから指締め付けすぎ。ちぎれちゃいそう」  そんなこと言ったって、勝手にお腹の奥が収縮してしまう。粘膜を擦りあげられ、前立腺をしつこく刺激されるとどうしようもなくなる。 「あ──……も……や……っ」  痛いくらいに、ジンジンと前が張り詰めている。  我慢ならずに自分の股間へ手を持っていった。  だが包み込む直前で、貴臣にその手を掴まれてしまった。 「ダメ。自慰の必要がなくなるくらいに俺が愛しますって言ったでしょう」  すごく意地悪な言い方をされて、俺は口をわななかせる。  貴臣のバカ。鬼畜。

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