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第120話 頭の中を覗きたい

 ベッドの上で足をジタバタさせた。  このむっつりスケベは何にも分かってない! きっと勉強とマッサージのしすぎで逆に頭が馬鹿になったんだ!  気付けば俺は窓の外にも聞こえそうな大声を出していた。   「そいつめちゃくちゃカッコいい奴なんだよね! 高3だからお前と一緒だな! で、俺のことを夢見るくらいに好きだって言われちゃってさ! あぁどうしよう、最近大学でもいろんな男の視線感じるし、モテ期が来ちゃってんのかもな!」  後半は完全にフェイクだけども。  つい勢いで言ってしまった。「なーんて、冗談だよ」とも言えず、黙り込んだ。 『……告白してきたのって、男なんですか』  ここでようやく、俺の欲しい貴臣の反応が返ってきた。  だが思っていた以上に声が冷淡で硬い。  恐怖を感じつつも、俺の口はまたペラペラと喋りだした。 「そうだよ。マジでびっくりした。両肩掴まれた瞬間さ、無理矢理キスでもされちゃうんじゃないかと思った」 『はぁ? 肩を掴まれたんですか?』  いや、なんかまずい。  こいつ完全に怒ってる。気持ちを察してほしいだけで、怒らせたり喧嘩したいわけじゃない。  「あー、ごめん、なんか眠くなってきちゃった。貴臣もさ、明日バイトなんだったら早めに体休めろよ。じゃあ、その友達もお大事にな」  俺は電話を切ってそのまま電源を落とした。  怖いから、明日の夜に電源を入れ直そうっと。  冷蔵庫から、こっそり常備しておいた缶チューハイを取り出した。プルタブを上げ、炭酸レモンの液体を体へ流しこむと気分は少しだけ落ち着いた。  一気に缶の半分程は飲み干した俺はもう1度ベッドに座り直し、肩をがっくりと落とす。  完全に、打ちひしがれた。  どうして貴臣はあんなにも余裕なのだろう。  いや、何も号泣しながら寂しがったり、愛の言葉を飽きるほど囁いてくれとかは望んでないけど。  もう少し、こう……なんかあっただろう。  (もしかして好きだっていう気持ち、俺の方が大きいのかな。てっきり、あっちの方が俺にベタ惚れしてんのかと思ってたけど……)  確かに塾だって単発のバイトだって、大事といえば大事だ。恋だけで人生生きていけるわけではない。  実家にいた頃は毎日顔を合わせていたし、毎日のようにセックスだってしていた。肌を重ねる度に幸福感は増す一方だった。  昔、貴臣に無視され続けていた頃に比べたら100倍マシだし、来週は金曜の夜から来るって言ってるんだから──  あまり気にしないようにしても、頭をぐるぐるしてしまう。  缶の中身を飲み干し、ゴミ箱へ投げ入れた。  お腹は空いたけど、貴臣の料理を楽しみにしていたから何も買ってきていない。今から買いに行く気にもなれずに、あぁーと伸びをしながら寝転がった。

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