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第121話 好きの度合*

   時刻はもう、21時を回っている。  貴臣が今からここに来てくれるっていう妄想をしたけど、それは絶対にない。万が一に来ようとしたところで、きっと父さんが外出を許可しないだろう。  そしてなんせ明日は単発のアルバイトが入っているのだから。  枕に顔をうずめて、スンスンと匂いをかぐ。  貴臣の残り香なんてあるわけないのに、どうにか探ろうとしてしまう。  眠る時は1つの枕を2人で使うから、いつも狭くてきつい思いをするのだ。だけど敢えて新しい枕は購入しない。密着できなくなってしまうから。  アルコールも手伝ってか、変なスイッチが入るのは簡単だった。  もうずっとオナニーしていない。貴臣との楽しみにとっておきたいから、ムラムラしてもなるべく我慢していたのだ。  俺はベッド脇の木製シェルフに手を伸ばし、収納ボックスの中のアダルトグッズを取り出した。  ついでにシェルフの隣にある小さなチェストの下段を開け、貴臣のボクサーパンツを1枚出した。  この部屋に何着か置いてある、貴臣の着替えの分。いつも使っている洗剤の香りしかしないけど、気分をより昂らせる為にも必要だ。  部屋の電気を消してベッドに横たわった。右手首にだけ手錠をかけ、シェルフの木枠に繋いで自分の手首を拘束した。  (今日は思う存分、イッてやる……っ!)  貴臣なんて必要なかったように。今日はとことん、自分を甘やかしてあげたい。  左手を使ってモタモタと服を脱いだ。ズボンと下着をずり下げると、すでに軽く勃ちあがっていた。  性器には触れずに、電動ディルドのスイッチを入れてお尻の方を刺激する。 「……っ、ん」  ブルブルと振動するそれを尻の上で滑らせれば、体の中心がどんどん熱を持っていく。 焦らしつつも、内側へと滑らせていって、ゆっくり中へと沈み込ませていった。  このディルドは、こっちに来てから2人で新たに購入したアイテムで、割と細いタイプなので慣らさずにすんなり入ってしまう。  中の粘膜を擦り上げながら入ってくる感覚に身体中が震える。奥まで届いたのを確認した俺はディルドから手を離し、すぐイきそうになるのを耐えた。   「……ん、あ、気持ち…い……っ……ん」  ボクサーパンツを握りしめ、鼻と口に押し付ける。  ちょっと強引に、けれど優しくキスを落としてくれる恋人の姿を想像しながら腰を揺らす。  いい所にあたりそうであたらない、自分ではコントロールできないディルドの動きに興奮して、気分は最高潮になったけれど、やっぱりどこか変態になりきれない自分がいた。    こんな道具じゃなくて、本当は貴臣にされたかったのに。また1週間、お預けかよ。  (まなじり)に涙が滲んだのは、快楽からの気持ち良さのせいではなかった。  ジンジンと腫れ上がっているペニスに手を伸ばし上下すれば、すぐに欲望を解放することが出来た。    ディルドを抜き、右手の拘束を取ることもしないまましばらく目を閉じてボーッとする。  イッて気持ちよかったのに気分は晴れない。  貴臣に会いたい。会いたい……会って沢山キスがしたい。  俺はそのまま、意識を手放していた。

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