4 / 7
第4話
残っているのは、普段は近づかないようにしていた寝室だった。
付き合いはじめの頃は何度もこの部屋を使っていた。もちろん、アッチの意味も含め。
でも雅也が沙耶を引き取ると決めたとき、俺はアイツに黙ってベッドを処分し、2人の為の新しい物を用意したんだ。
だって嫌だろ? その……あんなことをしていた場所に、この純粋な女の子を寝かせるだなんてさ。
そしてそれからは、ここに立ち入らないようにしていた……俺が踏み込んでしまったら、汚してしまうような気がして。
正直今も入りたくはない……でも……
(沙耶はここにいるんだよな。見つけてやらないと可哀想だし……今日だけは……ごめん!)
汗ばんだ手で、ドアノブを回すとギギギ……と低い音を鳴らしながら扉が開く。
入り口横の壁に触れ、電気のスイッチを探す。
パチッーーと音を立て部屋が一気に明るくなれば、目の前では白い布団の塊がもぞもぞと動いていた。
(これで隠れてるつもりなんだから、ほんと可愛いよな)
足音を立てないよう、静かにベッドへと近づき……ガバッと勢いよく布団をめくった。
「沙耶みーっ」
「あっくーーーん!」
「うわわっ!」
勢いよく飛びついてきた少女をなんとか抱きとめて、その場に尻餅をつく。
「っててて……お前、勢い良すぎ」
「へへーっ♪」
「怪我、してないか?」
「あっくんがギューしてくれたから大丈夫っ。それよりも、あっくん見つけた時の言葉言って!」
目を輝かせながら、かくれんぼならではの言葉を求める沙耶。
「はいはい……沙耶、みーつけた」
「あっくん。見つけてくれて、ありがとう。……はい、ごほーび」
そう言って彼女は、小さな両手で大切そうに握りしめた白い箱を、俺の前に差し出した。
ともだちにシェアしよう!