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第一章・3
「あと5個もあるよ。諦めたら?」
「ノルマなんです。売れ残ったら、バイト代から引かれるんです」
そこで、お客様、買ってくれませんか? と来た。
「今なら明日から使える20%OFFのクーポンを付けますよ!」
「いらない」
「一個でいいですから」
「いくら?」
「2000円です」
安いな、と思った寿士だ。
裕福な家庭に育った彼にとっては、2000円どころか10000円も小銭に等しい。
「でも、荷物になるから嫌だな」
「ぼ、僕がお客様のご自宅までお届けしますから!」
本気か? と寿士はサンタの顔を見た。
寒いので唇は青いが、整った形をしている。
鼻も、すっと高い。
少し色の淡いショートヘアも、好みだ。
何より、目が良かった。
久しぶりに見る、綺麗な眼差し。
つぶらな瞳が、うるうるしている。
「じゃあ、買ってあげる」
「ありがとうございます!」
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