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第一章・4
「全部」
「え?」
「5個、全部買ってやるから、運んで」
「あ、ありがとうございます……」
残りのケーキ5個を全て買い上げる、という客に挨拶をしに、店長が現れた。
「毎度ありがとうございます!」
「その代わり、このサンタさんに運んでもらうから。彼、そのまま直帰にしてもらえる?」
「相沢(あいざわ)くん、今日何時までだったっけ?」
「21時です」
それならOK、と店長の許しが出た。
時計を見ると、あと3分だ。
レジを済ませると、ちょうど21時になった。
着替える時間がないので、サンタ服のまま手荷物を持って相沢は出て来た。
見ると、タクシーの運転手がすでにケーキを車内へ運びこむ最中だ。
「ごめんなさい」
「はい、最後の1個」
寿士はケーキを相沢に渡すと、タクシーに乗り込んだ。
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