15 / 152
第二章・3
もくもくと食事を進める寿士に、瑠衣はおずおずと訊ねてみた。
「あ、あの。お客様のお名前は、何ておっしゃるんですか?」
「聞いてどうするの?」
「うっ……」
ワインを一口飲み、寿士は瑠衣に気怠く言った。
「俺は瑠衣のお客様。それでいいじゃないか」
それとも、と寿士は瑠衣のグラスにもワインを注ぎながら言った。
「俺の恋人にでも、なりたいの?」
「違います!」
瑠衣の速攻否定に、寿士はムッとした。
違う、だと?
この俺の恋人になりたくない、だと?
「前言撤回するなら、今のうちだよ。瑠衣は可愛いし身体も素敵だったから、恋人にしてやってもいいんだから」
「お断りします!」
「Ωのくせに、αに逆らうだって!?」
「αのくせに、Ωを苛める人は嫌いです!」
瑠衣は食事をやめて椅子から降り、リビングに置いてあった自分の荷物をかき集めた。
「さよなら!」
「おい待てよ。まだケーキを……」
そこまでで、瑠衣は寿士の部屋を出ていった。
ともだちにシェアしよう!