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第二章・4
「もう、最低! 二度と会いたくない、あんな人!」
ぷんぷんと怒りを吹き出しながら歩いていた瑠衣だったが、ふと自分の格好に気が付いた。
ぶかぶかの、ニットとヒートコットンのパンツ。
「これ、僕の服じゃない……」
お客様のルームウェア、そのまま着て出てきちゃった!
「ああ、もう、最悪」
洗濯して、返しに行かなければならない。
それを思うと、途端に憂鬱になった。
でも……。
「何か、いい匂いする……」
石鹸の香り。
昨夜の、バスルームでのセックスを思い出した。
嫌だったけど。
悲しかったけど。
でも。
「気持ち、悦かった、なんて……」
苛められ、喘がされ、最後には感じて漏らして果ててしまった。
ぶんぶんと、瑠衣は首を横に振った。
「忘れよう。あんな人のことなんか!」
今日も、お店でケーキを売らなきゃならないんだから。
瑠衣は急いで、家路についた。
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