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第二章・6
パティシエたちはすでに帰宅し、厨房には誰もいない。
薄暗がりの中、瑠衣はいきなり店長に抱きすくめられた。
「店長!?」
「相沢くん、君は可愛いね。ホントに可愛い」
「い、いけません! やめて!」
店長には、家庭がある。
妻も子もいる、お父さんなのだ。
それが、何で……!?
「瑠衣、私は初めて見た時から君のことが!」
初めて見た時から、って、面接の時から!?
それに、瑠衣、とか言ってるし!
はぁはぁと息の荒い店長の唇が、迫って来る。
「ね、瑠衣。キスしよう。キス」
「ヤです。やめてぇえ!」
その時、ふっと店長が瑠衣から離れた。
「イヤって言ってるだろ、瑠衣は」
「お客様!?」
なぜか寿士が、そこにいる。
店長の襟を持って、瑠衣から引きはがしたのだ。
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