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第二章・7
タクシーの中、瑠衣は黙って座っていた。
両脚は固く閉じて、ガードしている。
隣には、寿士が。
沈黙に耐え兼ね、瑠衣は彼に声をかけた。
「何で、また店に来たんですか?」
「ケーキ、食べたくなったから」
「嘘でしょう」
「じゃあ、瑠衣に会いたくなったから、とでも言って欲しいの?」
「違います!」
はぁ、と溜息をついて瑠衣はシートに座りなおした。
(バイト、また探さなきゃ)
もう、あの店では働けない。
働きたくない。
(店長、あんな人とは思わなかった)
「真面目そうな人だったのにね」
「どうして解ったんですか!?」
「瑠衣の考える事なんか、お見通しだよ」
単純だもんね、と笑う寿士が憎らしい。
「あんな真面目な店長をも狂わせてしまう、魔性のフェロモンの持ち主なんだよ。瑠衣は」
「そんなの、嫌です……」
「褒めたのに」
「褒めてません!」
そこで、タクシーは止まった。
昨夜と同じように、瑠衣は寿に連れられて彼の部屋の敷居をまたいだ。
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