20 / 152
第二章・8
「こ、今夜は寝ませんから! お客様は、ケーキ買ってくれませんでしたから!」
「危ないところを、救ってやったじゃないか」
店長に、犯されそうだったじゃん。
そう言う寿の言葉に、瑠衣は厳しい現実を思い出した。
「あぁ。また新しいバイト、探さなきゃ」
「あそこ、辞めるの?」
「辞めます。店長が怖いので」
「じゃあ、俺が新しい仕事を斡旋してやるから」
「お客様が?」
胡散臭い話だ。
探るような瑠衣の視線をかわし、寿士は紅茶を差し出した。
「砂糖、入れる?」
「バイトの話じゃなかったんですか!?」
「何だ、やっぱり仕事欲しいんだ」
それは、そうです、と瑠衣は下を向いた。
家賃に公共料金。交通費、スマホの通信料に、発情抑制剤の購入費。
お金は、いくらあっても足りないのだ。
ともだちにシェアしよう!