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第三章・7
翌朝、瑠衣が眼を覚ますと隣に寿士の姿はなかった。
「あれ……?」
顔を洗い服を着てリビングに行ってみると、キッチンの方から良い匂いが漂ってくる。
覗いてみると、寿士が卵を焼いていた。
「昨日と同じ服とか、ありえない」
「し、仕方ないでしょう!? 手持ちがないんだから!」
「ま、座ってよ。ちょうど起こしに行こうと思ってたし」
テーブルには、美味しそうな朝食が準備されていた。
「これ、寿さんが?」
「うん。料理とか、結構好きなんだよね」
意外、と椅子に掛けると、寿士はふわふわのオムレツを目の前に出してくれた。
「ありがとう」
「いいよ、別に。趣味だから」
(素直じゃないッ!)
「何、ムッとしてんの。食べなよ、熱いうちに」
「いただきます……」
寿士は素直ではなかったが、オムレツは素直に美味しかった。
二人で、一つの食卓を挟んでの食事。
(僕、ホントに寿士さんの愛人になったんだ)
それはオムレツの味と共に、実感となって湧いた。
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