34 / 152

第四章・5

「あ、はぁッ! 寿士さんっ。寿士、さんんッ!」 「素敵だよ、陽詩。すごく、いい感じ」 「んんうッ! 好き……ッ。寿さん、愛してるぅッ!」 「俺も、陽詩のこと大好き」  ぐちゅりぐちゅりとした水音に、激しい喘ぎ。  肌と肌がぶつかり合う、乾いた音が延々と続く。  瑠衣は、眼を逸らさずにそれを見ていた。  耳を塞がずに、それを聞いていた。 (僕には、好きだ、なんて一回も言ったことないのに)  ぽろり、と一粒だけ涙がこぼれた。  手で拭いもせず、ただ激しく愛し合う二人を、見ていた。  そこで、寿士がふとこちらを見た。  手を挙げて、ひらっと振っている。 「バカっ!」  ぷい、と瑠衣は他所を向いた。 「あぁああ! 寿士さんんッ!」  陽詩が、果てた。

ともだちにシェアしよう!