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第四章・5
「あ、はぁッ! 寿士さんっ。寿士、さんんッ!」
「素敵だよ、陽詩。すごく、いい感じ」
「んんうッ! 好き……ッ。寿さん、愛してるぅッ!」
「俺も、陽詩のこと大好き」
ぐちゅりぐちゅりとした水音に、激しい喘ぎ。
肌と肌がぶつかり合う、乾いた音が延々と続く。
瑠衣は、眼を逸らさずにそれを見ていた。
耳を塞がずに、それを聞いていた。
(僕には、好きだ、なんて一回も言ったことないのに)
ぽろり、と一粒だけ涙がこぼれた。
手で拭いもせず、ただ激しく愛し合う二人を、見ていた。
そこで、寿士がふとこちらを見た。
手を挙げて、ひらっと振っている。
「バカっ!」
ぷい、と瑠衣は他所を向いた。
「あぁああ! 寿士さんんッ!」
陽詩が、果てた。
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