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第四章・6

 泊って行ってもいいのに、という寿士を、陽詩はやんわりと断った。 「帰らないと、親がうるさいから」  じゃね、とドアの向こうへ消えてしまった。 「……瑠衣までお見送りしなくてもいいのに」 「気持ち、悦かった?」 「ん、まぁまぁ。でも、瑠衣の方が上かな」 「褒めてるつもり?」 「違うの?」  全くもう、と瑠衣はリビングのソファに身を投げ出した。 「恋人は煩わしい、とか言っておきながら」 「あっちから、付き合って欲しい、って言ってきたんだ」  来るものは拒まず主義、だから。俺。  それより、と寿士は瑠衣の隣に腰かけた。 「何で瑠衣は、親に放り出されたんだ?」 「こんな時に、その話を蒸し返すかなぁ」 「聞かせてよ」 「仕方がないなぁ」  瑠衣は、ぽつりぽつりと語り始めた。

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