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第六章 恋敵に注意
「え? お正月、どっか行くの?」
「実家に帰省、だよ。どっかはないだろ」
「ふぅん……」
「何? 淋しいの? 俺がいなかったら」
「冗談。いない方が落ち着くもんね」
あんな会話でマンションを出てきたが。
1月1日の午前中で、すでに寿士は午後には実家を出ようと考えていた。
「さすが楠様のご子息。御立派になられて!」
「大学の成績も優秀。うちの子にも見習わせたいものですわ!」
「実は私には、今年20歳の娘がおりまして!」
年始の挨拶に来た来客の、うるさいことと言ったら。
しまいには縁談まで盛り上がり始めて、寿士は早々に逃げ出したくなっていた。
「あ~あ。だるい」
「そう言うな。ファンサービスだと思っておきなさい」
「ファン、ったって、父さんのファンだろ?」
「あなたは、そのお父さんの後継ぎなのよ。さ、いい御顔して」
お昼を食べなさい、と雑煮を差し出す母に、寿士はそれとなく訊いてみた。
「ね、俺の将来のパートナーって、もう決まってるの?」
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