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第六章・7

 神社は大勢の人で賑わっていた。 「元旦早々、ご苦労さんだな。みんな」 「寿士さんだって、その一人のくせに」 「俺は、ただの気まぐれ。神頼みとか、考えてないから」 「……」  返事が無い。 「瑠衣?」  いない。  遠くで、寿士を呼ぶ声だけがする。  瑠衣は、人波に揉まれて寿士からずいぶん離れてしまっているのだ。 「ひ、寿士さ~ん~」 「ったく、世話の焼ける」  寿士は人ごみをかき分け、瑠衣の元へとたどり着いた。 「離れるなよ。迷子になるぞ」 「あ」  手。  大きな、あったかい手。 (初めて、手を握ってくれた)  手を引かれ、瑠衣は頬を染めながら早足で寿士に続いた。

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