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第六章・8
拝殿へ何とか到着し、鈴緒を握った。
寿士と一緒に本坪鈴を鳴らし、手を合わせた。
そこで。
(な、何お願いしよう)
お金……は、いまのところ不自由ないし。
健康……優良児だし。
恋愛……、そこでちらりと寿士を見た。
「行くぞ」
「は、早ッ!」
「瑠衣が遅いんだよ」
(えと、それじゃ、とりあえず。寿士さんと仲良くできますように!)
人に押されながらその場を離れた二人は、また手を繋いで歩き始めた。
「あ、おみくじ。おみくじ、引きたい」
「引けば」
(そこで、一緒に引こう、とは言わないんだよね……)
解ってる。
解ってるよ、僕は寿士さんの愛人。
ただの、愛人なんだもん。
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