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第七章・4
「俺なら、相沢を悲しませるようなことはしない。相沢だけを、見つめ続けるけどな」
「あ~あ。その言葉、寿士さんに聞かせてやりたい」
いつの間にか山岡は、テーブル上の瑠衣の手を握っている。
「な、相沢。午後、ヒマ?」
「ん? 特に予定はないけど」
あの、さ。
山岡は、声を潜めた。
「ホテル、行かない?」
え。
それって、つまり。
「ど、どうしようかな……」
瑠衣の頭には、寿士の姿が浮かんでいた。
(寿士さん、僕が他の人と寝たらどう思うだろう)
「怒られちゃうよ、寿士さんに」
「怒らせるなよ。その寿士って奴も、瑠衣以外の人間と寝てるんだろ? 浮気してんだろ?」
高校生の頃、慕っていた山岡先輩。
優しかった。
いつも、大切に抱いてくれてたっけ。
「うん……。じゃあ、行く」
瑠衣は、山岡と共にブティックホテルへ入ってしまった。
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