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第七章・8
瑠衣は、終始無言だった。
身じまいを整える山岡を、じっと見ていた。
服を着終えた山岡は、寿士のよこした封筒を急いでバッグへ捻じ込むと、後も見ずに立ち去ってしまった。
「山岡先輩……」
うなだれた瑠衣の眼から、一粒涙がこぼれた。
「金でほいほい動くような男は、今後信用するなよ」
「寿士さん、ひどい。僕だって、金で動いた男じゃない。寿士さんは、僕を信じてないの?」
「信じてない」
だから、GPSでいつでも行方をたどれるようにしておいた。
「だったら、僕なんか愛人にしなきゃいいじゃない! 何で、僕を愛人にしたの!?」
「可愛いから。エッチが巧いから。あと……」
(放っとけないから)
「あと、何?」
「いや、それは言わない」
「ズル!」
ぼろぼろと、瑠衣は涙をこぼした。
ひどい。
ひどいよ、寿士さん。
そんな言葉を吐きながら、泣いた。
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