64 / 152

第七章・9

「シャワー浴びてきて。帰るから」 「う、ひっく、うぅ。んっ、んぅ、うぅ」 「もう、泣くなよ」 「寿士さんが、泣かせたくせに」  シャワールームへ消えた瑠衣を見送り、寿士はソファに身を沈めた。 「ったく……」  何だよ、これ。  ゼミの講義中、ふと気になって瑠衣の行方を確認したら、とんでもない所に居て。  勉強なんか放ったらかして、手切れ金用意して。  挙句の果てには、瑠衣を泣かせて。 「瑠衣が悪いんだからな。浮気なんかするから」  ぼそりと独り言をこぼしたとき、なぜか涙が湧いて来た。 「何だよ、これ。ホントにもう、ウザいんだよ」  天井を見上げて鼻をすすり、涙を瞼の奥へしまい込んだ。

ともだちにシェアしよう!