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第七章・9
「シャワー浴びてきて。帰るから」
「う、ひっく、うぅ。んっ、んぅ、うぅ」
「もう、泣くなよ」
「寿士さんが、泣かせたくせに」
シャワールームへ消えた瑠衣を見送り、寿士はソファに身を沈めた。
「ったく……」
何だよ、これ。
ゼミの講義中、ふと気になって瑠衣の行方を確認したら、とんでもない所に居て。
勉強なんか放ったらかして、手切れ金用意して。
挙句の果てには、瑠衣を泣かせて。
「瑠衣が悪いんだからな。浮気なんかするから」
ぼそりと独り言をこぼしたとき、なぜか涙が湧いて来た。
「何だよ、これ。ホントにもう、ウザいんだよ」
天井を見上げて鼻をすすり、涙を瞼の奥へしまい込んだ。
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